I Wish~洋楽歌詞和訳&解説

80年代の洋楽ロック・ポップス&ビートルズを中心に、歌詞の和訳と詳しい解説でお届けします♪

「ジーズ・ドリームス」ハート

2018.12.28

category : Heart

Heart - These Dreams1 Heart - These Dreams2


Heart - These Dreams (1986年)



~概要~

「ジーズ・ドリームス」はハートの8thアルバム『 Heart 』からの3rdシングルで、バンドとして初めて Billboard Hot 100 の No.1(年間33位)に輝いた作品です。
ハートのリード・ヴォーカルの多くはアン・ウィルソン( Ann Wilson )が務めていますが、本曲は妹でギタリストのナンシー・ウィルソン( Nancy Wilson )が初めてリードを執ったシングルでした。


ハートは1976年のデビューからの4作それぞれ(アメリカだけで)100~300万枚のセールスを挙げてきましたが、80年代に入ってからの2作は何れも50万枚前後にまで落ち込んでいました。
最も大きな原因は楽曲で、ギタリストのハワード・リースも“ヴォーカルの女の子たちは他人の曲を歌おうとしなかったんだ”と言及しています。

8thアルバムのために、ジェファーソン・スターシップやサバイバーのプロデューサーとして知られたロン・ネヴィソン( Ron Nevison )が招聘されましたが、彼によると“ハートは当時20曲ぐらい用意していたけど、良いのはほんの数曲”と評されています。
ロンは他人の曲を入れて楽曲の質を高める必要性を感じ、以前プロデュースを手掛けた Wolf & Wolf のピーター・ウルフ( Peter Wolf )をレコーディングに参加させることにしました。

当時ピーターはスターシップの『Knee Deep in the Hoopla』もプロデュース中で、そこで楽曲を提供しているライターの一人マーティン・ペイジ(Martin Page)にハート向けの楽曲を照会したところ「We Built This City(シスコはロック・シティ)」と「These Dreams」を紹介され、ピーターは“「These Dreams」が凄くいい、これをやらせてみたい”と感謝の電話を入れています。
ピーターがデモを持ち帰り“ハートらしくないけど、とにかくカッコいいんだ”とメンバーに聴かせたところ好評で、中でも普段リード・ヴォーカルを執らないナンシーは“私のために書いてくれた曲?”と喜んだそうです。


「These Dreams」はプロデューサーのロン・ネヴィソンによって都会的でコマーシャルなサウンドに仕上げられ、それまでのハートと異なるアプローチは賛否のあるところですが、90年代に“アンプラグド”がブームとなり、1994年夏にホームタウンであるシアトルで行ったステージでは本来の“アコースティック”スタイルで演奏されました。
この時の模様はライブ・アルバム『The Road Home』に収められ、日本ではトヨタ・ランドクルーザーのCMソングに起用された「愛していたい」(過去ログ)がリバイバル・ヒットを遂げています。


 



~Lyrics~

I search for the time
針のない腕時計に
On a watch with no hands
時間を探し求めている

「These Dreams」の作詞者は、エルトン・ジョンの共作パートナーとして有名なバーニー・トーピン(Bernie Taupin)。
“サスガ”のフレーズですが、【針のない腕時計】というと私の頭に浮かぶのは[デジタル時計]ぐらいで、コレだとちょっと詩情に欠けるなぁ…
でも実際調べてみると、詩的とは違うもののアート性の高いデザインが多数ありました。

中でも一際目を引いたのは、スイスの最高級時計ブランド・HYTの【H3】というモデル。
私には時計というより“メカ”にしか見えないシロモノですが、これがナンと4025万円(+税)

 

Is it cloak n dagger
それは“クローク&ダガー”
Could it be spring or fall
…それとも、春か秋?

【Cloak and Dagger】は直訳すると“外套と短剣”で、スパイ・ミステリー・暗殺といった要素を内包するシチュエーションを言及する言葉です。
この言葉からさまざまな創作が生まれていますが1984年にキャメル (Camel)やニック・カーショウがそれぞれ同名曲を発表、『E.T』のヘンリー・トーマス主演のファンタスティック・サスペンス映画『ビデオゲームを探せ!(Cloak & Dagger)』も同年であり、この頃そんな流行りでもあったのでしょうか…。


But the prince hides his face
だけど、その王子は顔を隠している
From dreams in the mist
夢の中の霧によって…

作品のテーマは【dream】ですが、それと同じくらいの比重を感じるのが、【mist】
それもそのはず、本曲は元々「Boys In The Mist」というタイトルで、バーニー・トーピンがスティーヴィー・ニックスのために作詞したものだったそうです。
確かにフリートウッド・マックの「Dreams」が象徴する、ぼんやり霧がかってミステリアスな彼女の魅力はまさに【mist】のイメージですが、当のスティーヴィーはこの曲を断ったため、バーニーの【dream】は叶いませんでした。

次に「ベティ・デイビスの瞳」(過去ログ)のキム・カーンズの元に持ち込むと、彼女は楽曲自体は気に入ったものの声域が合わず見送られ、タイトルやその他を修正し、前項の経緯でハートにチャンスが巡って来たというわけです。



~Epilogue~

デモを聴いた瞬間ナンシーが“一目惚れ”を自覚し、アンも“まるでナンシー自身が歌詞を書いたみたい。彼女のことを理解する人ならわかると思うけど、その内面が見事に描かれている…”と評するほど、ナンシーにとって「These Dreams」は運命的といえる曲でした。
確かに【mist】というにはアンの声は線が強過ぎるし、ナンシーのやわらかな声の方がイメージに合います…

加えて、ナンシーの別の魅力を引き出したのが、サビの高音部の少しかすれたセクシーな声でしょう。
実は、最初のレコーディングの時ナンシーはひどい風邪を引いてしまい、声を嗄(か)らしてしまったそうです。
“でも変な話、後で聴いてみるとその方がよかったみたい…”と本人も回顧するようにこれは【怪我の功名】で、その後喉が回復しレコーディングを重ねたものの、逆に“その時のようにハスキーな声を出すのに苦労した”というエピソードまで生まれました。
彼女の【風邪声】には熱烈なファンもいたようで、ナンシーは“ロン(ネヴィソン)ったら、もう一度病気になっちゃえば? …なんていうのよ!(笑)”と、裏話を披露しています。


These dreams go on when I close my eyes
目を閉じると、夢の世界
Every second of the night I live another life
夜の一秒一秒に、もう一つの命を生きている

また「These Dreams」は、ナンシーにとって忘れられない大切な人との思い出であると共に、その人に捧げられた作品です。
その人は Sharon Hess さんというハート・ファンの女性で、1985年にアンがカナダの新聞『The Georgia Straight』に語った記事によると、ナンシーとはその数年前のコンサートで出会いました。
その時ナンシーは(彼女のイメージする)【夢のギター】をスケッチに描いて、 Hess さんにあげたことがあったそうです。

それから数年後、Hess さんは白血病を発病していました。
彼女は大好きなナンシーのために【カスタム・ハンドメイドの青いアコースティック・ギター】を製作すると、それをナンシーに手渡すことが最後の願いでした。
願いは実現し、さらに『Heart』をレコーディング中のスタジオに招待され、メンバーと夢のような数日間を過ごしたといいます。
しかしその後、体調が悪化し【夢の世界】に訪れることができなくなってしまいます。

すると今度はナンシーが病床の Hess さんを見舞い、重篤な彼女に添い寝して励ますと、医者も驚くほど気力を持ち直したそうです。
しかしそれは一時的なことで、「These Dreams」のファイナル・ミックスを終えた数日後の1985年3月16日、彼女の魂は21歳の若さで天に召されています。
そして奇しくもそれは、ナンシーの31歳の誕生日の出来事でもありました。

その後 Hess さんの肉体が土へと還る日…
ナンシーによると、彼女は【Heart】のTシャツとキャップを身に付け、お気に入りのギターを抱いて旅立ったそうです。



「ジーズ・ドリームス」


Writer(s): Martin Page, Bernie Taupin /訳:Beat Wolf


とっておきの小さなキャンドル
私のお守りの灯火
前方に人影
木々へと移りゆく
リネンに包まれた白い肌
パフューム(香水)をつけた手首
空にはぽっかり円い月
夢たちは霧の中

刃の上の暗闇
私は光の当たらない場所に立ち
針のない腕時計に
時間を探し求めている
はっきりとあなたを見たい
もっとそばに来て…
だけど思い出すのは
霧に包まれた夢だけ


These dreams...
目を閉じると、夢の世界
夜の一秒一秒に、もう一つの命を生きている
These dreams...
夢はまどろみ、外が凍える時も
私の一瞬一瞬は眠ることなく、寒さから遠ざかってゆく

それは“クローク&ダガー”
…それとも、春か秋?
この身は傷ひとつなく
ステンドグラスの壁をすり抜け
視界はかすんでゆく
掌中のキャンドル
形のない言葉
唇からこぼれ落ちる



向こうに、何かがある
それに抗うことはできない
痛みから逃れ、隠れなくては…
向こうに、何かがある
それに抗うことはできない

これまで耳にした
一番の甘い歌は、沈黙
でも、おかしいの…
夢の中で、あなたの足は決して地に触れることがない
森の中は、王子さまでいっぱい
キスだって望むがまま…
だけど、その王子は顔を隠している
夢の中の霧によって…




~Let's Singin'~

最後までお読みいただき、ありがとうございました♪
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tags : 音楽 Lyrics 和訳 洋楽 

コメント

ビ-トさん明けましておめでとうございます!今年も宜しくおねがいしますね!良い1年になりますように!

2019.01.01  たまごバナナ  編集

明けましておめでとうございます。

ナンシーとファンの女の子の話は「ビルボード・ナンバー1・ヒット」で読んだ概要しか知らなかったんですが、ここまで感涙系とは知りませんでした。
新年早々勉強になりました。
また今年もお邪魔させてくださいね。

2019.01.02  地味JAM尊  編集

たまごバナナさん

> 明けましておめでとうございます。
> たまごバナナさんも、良い1年でありますように。

2019.01.02  Beat Wolf  編集

Re: 明けましておめでとうございます。

明けましておめでとうございます。

ネタの出発点はまさに「ビルボード・ナンバー1・ヒット」でした。
でも本刊はI・IIから忘れられた頃発刊されたのに
チェック済みとはサスガです!(笑)

「感涙系」のエピソードは
「その時」の写真もあるのですが、掲載は自粛しました。

2019.01.02  Beat Wolf  編集

あの青い本ですが

まともな部分が半分程度しかないのに高かったすよね。
せめて90年代入るくらいはやって欲しかったんですが。
洋書とかで出てないんでしょーかね。

2019.01.06  地味JAM尊  編集

Re: あの青い本ですが

私は2000年代に「青い本」の存在を知って
中古で買ったので半分程度の値段で買いました。(笑)

半分しか載せない時点で、「ワケアリ」っぽいですよね。
でもこれは功罪ありですが、今の時代はネットで情報が豊富なので
こういう書籍は難しいかもしれませんね…。

2019.01.06  Beat Wolf  編集

楽しい読み物です(笑)

まだデビッド ボウイとハートしか読んでないけど、楽しいですね。
読者好きの私に最高のブログです。
これからも来ますのでリンクさせてもらいました。ロックっていいなぁ

2019.01.08  グラハムボネ太郎  編集

Re: 楽しい読み物です(笑)

ありがとうございます。
モバイル時代に合わせてもっと短くしないとと思うのですが
欲張りでつい長くなってしまいます。(汗)

リンクありがとうございました。
とりあえず、こちらもお邪魔させていただきます。

2019.01.08  Beat Wolf  編集

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古い歌の“温故”から、歳月を重ねた“知新(いま思う・いま考える)”を綴ります。



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