デヴィッド・ボウイとミック・ジャガーというロック界のスーパースターがデュエットした「ダンシング・イン・ザ・ストリート」は、1985年の“アフリカ難民救済”目的のコンサート『ライヴ・エイド(LIVE AID)』のチャリティー・シングルとして録音された作品です。 イギリスをはじめ世界各国でNo.1に輝き(UKでは年間6位)、アメリカ Billboard Hot 100で7位となる大ヒットを記録、すべての利益は慈善団体に寄付されました。
実はこのコンサートのトリを務めたのはポール・マッカートニーでしたが、2曲目の「Long Tall Sally」の後に“サプライズ”として紹介され、入ってきたのがデヴィッド&ミックでした。 これによって演じられた恐らく一度きりの生「Dancing In The Street」は二人のほかポールやエルトン・ジョン、エリック・クラプトン、フィル・コリンズ、マーク・ノップラー、ブライアン・アダムスなどをバックに従えた豪華絢爛なものとなっています。 (ただし、恐らくまさに“サプライズ”で準備もなく歌ったような出来である)
そして「Dancing In The Street」はソウル・ミュージック界を代表するマーヴィン・ゲイらが作曲し、最も多くのアーティストにカバーされたモータウン・ソングとして有名です。 オリジナルは1964年、アメリカの女性コーラス・グループのマーサ&ザ・ヴァンデラス(Martha and the Vandellas)の歌唱によって発表され、Hot 100 で2位(年間17位)を記録しました。
主なカバーはザ・キンクス(1965年)やママス&パパス(1966年)、グレイトフル・デッド(1966年)、カーペンターズ(Richard Carpenter Trio/1968年)、ヴァン・ヘイレン(1982年)ほかがあり、ロックの殿堂【500 Songs That Shaped Rock & Roll】や米国議会図書館【National Recording Registry】にも記念される、まさにジャンルを超えて愛され続けたアメリカのスタンダード・ナンバーです。
~ Story ~
Okay Tokyo, South America, Australia, France, Germany, UK, Africa
デヴィッド&ミックver.にはオリジナルに存在しないフレーズが加えられており、それが“世界の国と地域”への言及です。 これは恐らく、本バージョンが『ライヴ・エイド』という世界規模のチャリティを目的として制作されたことと無関係ではないでしょう。 その“一番手に【Tokyo】”が挙げられていたことは、多くの日本人に喜びを与えました。 日本が、“Japan as Number One”とも形容されていた時代…。
【USSR】は[Union of Soviet Socialist Republics]で【ソビエト社会主義共和国連邦】、かつて存在しアメリカと東西冷戦を繰り広げた超大国です。 ビートルズ健在のころ西側に属していた日本でも“公序良俗を乱す”として右翼団体が一触即発だったように、“イデオロギーの向こう側”にあった人々はこのメッセージをどのように受け止めていたのでしょう…。
Baltimore in DC now (Dancing in the street) DCのボルチモア Don't forget the motor city (Dancing in the street) 忘れちゃいけない、モーター・シティ
【the motor city】は自動車産業の都市ミシガン州デトロイトの通称で、【the motor town】とも表されます。 作者であるマーヴィン・ゲイが所属した『Motown』レコードはデトロイト発祥のレコード・レーベルで、その名称はこれを略したものです。 本作がテーマに掲げる「Dancing In The Street」の着想は、作者の一人 William "Mickey" Stevenson が、夏にデトロイトの人々が開かれた消火栓の水を浴び涼んでいる姿を“水中で踊っているよう”とイメージしたことに由来するといわれます。
これを基にアメリカ各地の都市を挙げ、全国でも楽しい時間を過ごすよう“Dancing In The Street”と込めたわけですが、社会からは“意外な反響”もみられました。 1960年代のアメリカでは黒人(アフリカ系アメリカ人)に対する人種差別解消を求める大衆運動が盛んになっており、彼らの気持ちを代弁するものと解釈され、【公民権運動のアンセム】としても支持されています。
~ 「Dancing In The Street」はダメ、「Dancing On The Inside」なら良い、ではない ~
〈誰か、この動画に楽器の伴奏やコーラスやダンスを重ねてくれないかな?〉星野源
シンガーソングライター・星野源がSNSで呼び掛けた「うちで踊ろう Dancing On The Inside」のコラボレーションは、新型コロナウイルス(SARS-CoV2)蔓延による『外出自粛要請』で消沈していた人々を元気づける微笑ましい企画です。 これによりプロ・アマ問わず多数のユーザーが参加し話題となっていましたが、室内で寛(くつろ)ぐ自らの動画とメッセージを投稿した安倍首相の参加は大炎上となりました。
コメントを投稿