「恋を抱きしめよう」は1965年12月3日にイギリスで発売されたビートルズ11枚目のシングルで、「Day Tripper」との“両A面シングル”という初めての形式でリリースされ、全英5週連続No.1に輝きました(1960年代で7番目に売れたシングル/ビートルズでは5番目)。 アメリカでは同年12月6日に発売され、1966年1月8日付のBillboard Hot 100で「恋を抱きしめよう」がサイモン&ガーファンクルの「The Sound of Silence」(過去ログ)から1位の座を奪い、翌週「The Sound of Silence」が奪い返すと翌々週「恋を抱きしめよう」が返り咲くという激しい攻防を展開し、計3週No.1(1966年の年間16位)を記録しています(「Day Tripper」も週間5位)。 (本曲はオリジナル・アルバムには収録されず、ベスト盤『ザ・ビートルズ1962年〜1966年』や編集盤『パスト・マスターズ Vol.2』などに収録)
カバーで最も有名なのはスティーヴィー・ワンダーで、1971年にシングルとして発売し Hot 100の13位を記録しました(アルバム『Signed, Sealed & Delivered』)。 スティーヴィーは、ポールの『グラミー生涯業績賞』(1990年)や、ビートルズのエド・サリヴァン・ショー初演50周年を記念した『The Beatles: The Night That Changed America』のステージでポールを目の前に本曲をトリビュート演奏しており、ご記憶の方もあるでしょう。 また、ユニークなカバーといえばロック・バンドのディープ・パープル1968年のアルバム『詩人タリエシンの世界(The Book of Taliesyn)』に収録された「Exposition / We Can Work It Out」でしょう。 この作品はメドレー形式となっていますが、「Exposition」はベートーヴェンの交響曲第7番第二楽章とチャイコフスキーの幻想序曲「ロメオとジュリエット」を取り入れたプログレッシブなインストルメンタル・ジャムとなっており、未聴の方は是非ご一聴!
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~ Story ~
Try to see it my way 僕の考えを理解しようとしておくれ Do I have to keep on talking till I can't go on? 限界まで話し続けなければならないの?
歌詞をみる限り主人公は彼女との関係の継続に強い危機感を持っており、“君が改めてくれないと別れるしかなくなる”と訴えています。 【We can work it out】は“私たちはそれをやり遂げられる”ですが、彼はそれを楽観視して言っているのではなく、切実な願望を込めて【ask(請う)】しているように思えるのです。 このフレーズは主人公の友人である第三者(ジョン)が、主人公の言い分を補完して、あるいはカップル共通の友人として“早く仲直りした方がいいよ”と、諭しているような気がします。
「恋を抱きしめよう」の歌詞についてポールは“個人的なことだったかもしれない”と言及しており、それはこれまで「All My Loving」(過去ログ)や「And I Love Her」など、数々の彼の作品に着想を与えた恋人ジェーン・アッシャーとの関係を描いたものと解されています。 ポールはジェーンの家で彼女の家族と暮らすなど結婚も時間の問題と思われていましたが、一方でポールの“結婚したら家庭に”とジェーンの“結婚しても仕事(女優)を”というギャップを抱えていたともいわれています。 二人はポールの“We Can Work It Out”の言葉どおり問題を乗り越え1967年12月25日に婚約まで辿り着いたものの、1968年7月20日にジェーンが婚約破棄を発表し、数々の名曲を生んだポールとジェーンの恋は終わりを告げました(ポールの浮気が原因と言われる)。
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