~ Lyrics ~ Writer(s): Adolphe Adam, Placide Cappeau, John Sullivan Dwight /訳:Beat Wolf 聖なる夜、星たちは晴れやかに輝く 親愛なる救い主が生まれた夜 長く、罪と過ちの責を課せられた人類は思い焦がれていた 救い主が現れ、魂がその真価に触れるまで 希望に身は震え、疲れ果てた世は喜びに沸く 彼方、燦然たる新たな朝の出現を 跪き、天使の声を聞こう 神聖な夜…キリストが生まれた夜 神に授かりし天与の夜 安らかに輝く教えの光に導かれ 心を火照らせ、御子の揺りかごの傍らに立つ民 愛らしく、きらめく星の光に導かれ 東より来たる賢人たち 王の中の王、粗末な飼い葉桶に眠り 試練に生きる民の、友となるため生まれてこられた 主はご存じである…民の弱さと、窮乏を 主の前に跪き、王を仰ごう 主は心より説き給うた、互いを愛せよと 神の法は愛であり、福音(ゴスペル)は平和であると 鎖は主によって断ち切られ、奴隷は民の同信の友となる 御名の下、すべての抑圧は終わる 甘美な喜びの聖歌、感謝の合唱に、民は奮う 民よ、声を合わせ御名を称えよう キリストこそわが主、その御名を永遠に称えよう その力と栄華はいつも…それ以上に栄えあることを~ 概要 ~ 「O Holy Night」は、世界各地で演奏・歌唱し続けられているクリスマス・キャロル(宗教的な祝歌)のスタンダードです。
元々は
1843年 、
フランスの詩人プラシド・カポー (Placide Cappeau)が教区の聖職者から祝典用に依頼された詩で、
原題は『Cantique de Noël (クリスマスの賛美歌)』でした。
同年、フランスの
作曲家アドルフ・アダン (Adolphe Adam)が作曲し、1847年にオペラ歌手 Emily Laurey によって初演されています。
またフランス語圏では、フランス語の歌詞の冒頭から
「Minuit, chrétiens」 のタイトルでも親しまれているそうです。
一方、アダンの旋律に英語歌詞を当てた
「O Holy Night」 は
1855年 、
アメリカの牧師 (ユニテリアン)でクラシック音楽評論家でもある
ジョン・サリバン・ドワイト (John Sullivan Dwight)が、カポーの原詩の文字通りの翻訳ではない英語詞を創作しました。
日本では ドワイトの英語ver.から「オー・ホーリー・ナイト」、または1967年に日本基督教団讃美歌委員会が編集・出版した『讃美歌第二編』に於いて、「きよしこの夜」の訳者でもある讃美歌作家・由木康(ゆうき こう)が
「さやかに星はきらめき」 の邦題で英語ver.を日本語ver.へと翻訳し、この何れかで広く知られています。
VIDEO VIDEO 「Cantique de Noël」または「O Holy Night」は、世界各地で演奏・愛唱され続けており、
著名な歌手も多くカバー しています。
古くは“ゴスペルの女王”マヘリア・ジャクソンやアンディ・ウィリアムス、ビング・クロスビー。
世界的テノール歌手ルチアーノ・パヴァロッティやプラシド・ドミンゴ、
アンドレア・ボチェッリ 。
1980-90年代の“歌姫”ホイットニー・ヒューストンや
セリーヌ・ディオン 、
マライア・キャリー。 このうち最も有名なバージョンと言えば、恐らくマライアとセリーヌ
でしょう。
それぞれ収録されたマライア1994年のクリスマス・アルバム『Merry Christmas』は全世界で1700万枚、セリーヌ1998年の『These Are Special Times』も2000万枚と、共に記録的大ヒットを遂げました。
VIDEO VIDEO 2000年代以降も人気は増しており、
シャルロット・チャーチ やジェニファー・ハドソン、キャリー・アンダーウッド、アリアナ・グランデ、イル・ディーヴォ(Il Divo)、リア・ミシェル(Glee)など、例を挙げればきりがありません。
冒頭に挙げた
ケルティック・ウーマン というと、2006年『Christmas Celebration』収録のものが有名ですが、今回は2020ver.が公開されていたので、それをご紹介しました。
それ以外で特筆すべきというと、
ジャッキー・エヴァンコ (Jackie Evancho)ver.でしょう。
ジャッキーはセリーヌ・ディオンやマイケル・ブーブレを見出した世界的音楽プロデューサーのデイヴィッド・フォスターが2009年に見出した女性歌手で、2000年生まれの現在20歳にして既にアルバム8枚とEP1枚がプラチナ・ディスクを記録しているというクラシカル・クロスオーバーです。
ここで紹介する彼女の「O Holy Night」はその
9歳時のパフォーマンス で、恐らくデビュー前の映像と思われます。
VIDEO VIDEO VIDEO ~ Story ~ Long lay the world in sin and error pining, 長く、罪と過ちの責を課せられた人類は思い焦がれていた Till He appear'd and the soul felt its worth. 救い主が現れ、魂がその真価に触れるまで 旧約聖書『創世記』第3章 によると、最初の人間とされる
アダムとイヴが神の命令に背いた罪 により楽園から[失楽園]へと追放され、人祖の犯した罪は
子孫である人類に【原罪】 (original sin)として引き継がれているとされます。
カトリック教会の解釈によると、失楽園とは
神の恩恵が無い状態 であり、これによって人の世に苦しみ・情欲の乱れ・不毛な生・死が入り、
人類がここから脱するには神のいのちによって救われる必要 があるそうです。
新約聖書『マタイによる福音書』1:21 には、“彼は、おのれの民をそのもろもろの罪から救う者となる”として、
この世に生まれてきた救い主こそイエス・キリスト であり、キリスト教の教義において、イエス・キリストが人類をその罪から救うために身代わりで磔になったとされています。
His law is love and His gospel is peace. 神の法は愛であり、福音(ゴスペル)は平和であると Chains shall He break for the slave is our brother; 鎖は主によって断ち切られ、奴隷は民の同信の友となる 【法】は“みんなが守らなければならない掟(おきて)”であるからこそ【愛】は平等に注がれることが必要であり、一部への偏愛は世の平和を乱し、人々に争いをもたらします。
『新約聖書』マタイによる福音書第五章・
ルカによる福音書第六章 で
イエス・キリストは、“汝の敵を愛せよ”と説き ました。
奴隷制はキリストの教えに背く仕組みであり、
「O Holy Night」の歌詞 を創作したアメリカの牧師ジョン・サリバン・ドワイトは、このフレーズに
奴隷制度廃止の願いを込めた といわれています。
ドワイトが歌詞を創作した1855年は、アメリカではまだ奴隷制度が認められており、
1862年の『奴隷解放宣言』 以降一部の州を除いて公式に奴隷制が廃止、奴隷は解放されることになりますが、だからといって元奴隷が直ちに白人市民と同等の生活ができるわけではありません。
向けられる圧倒的差別の風潮の中、まさに裸一貫から身銭を稼ぎ、そうした社会を自らの意思で変えるための公民権も許されない
元奴隷の人々が、“神の法は愛”と説くキリストの【gospel】(福音)に希望 を見出したというのも、イエスをキリスト(救い主)と称えた古の人々の心情と重なるものがあります。
そして、そんな苦境にある彼らが教会に集まり、同じ境遇の人々と“call and response”で励まし合い、発展したのが
【gospel music】 でした。
~ Epilogue ~ 最後にご紹介するのは、
The Piano Guys feat. Lexi Walkerの「O Holy Night / Ave Maria」 。
ピアノ・ガイズ はピアニスト/チェリスト/音楽プロデューサー/ビデオグラファーから成る男性4人組で、クラシックからポピュラー音楽まで、
有名曲や古典曲のカバー&マッシュアップで人気の演奏集団 です。
「O Holy Night / Ave Maria」 は2017年、彼らにとって2枚目のクリスマス・アルバム『Christmas Together』に収録された作品で、ここでは
「O Holy Night」の歌詞・旋律と 、シャルル・グノーの「アヴェ・マリア」としても有名なヨハン・ゼバスティアン・
バッハの『平均律クラヴィーア曲集 第1巻』「前奏曲 第1番 ハ長調」の旋律を融合 させています。
歌唱しているのはアメリカを中心に活動する
女性歌手レキシー・ウォーカー (Lexi Walker)で、2017年
当時15歳 。
彼女は2013年のキャニオン・アイドル・ヴォーカル・コンクールで優勝し、2014年にアレックス・ボイエとのコラボで『アナと雪の女王』の
「Let It Go」(過去ログ) をyoutubeでカバーし、現在まで1億回以上再生されています。
VIDEO Truly He taught us to love one another; 主は心より説き給うた、互いを愛せよと クリスマスは、民を救うためこの世に現れた救い主の生誕を祝う日。
コロナ禍の中でも、すべての人に愛が届きますよう…。
O Holy Night / Ave Maria ft. Lexi Walker - The Piano Guys VIDEO 最後までお読みいただき、ありがとうございました ♪
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