「スピックス・アンド・スペックス」は、ビー・ジーズ1966年11月発売の2ndアルバム『スピックス・アンド・スペックス(Spicks and Specks)』の先行シングルで、同年9月22日にオーストラリアでリリースされ、同国のポップ・ミュージック新聞『Go-Set』で1月初旬に自身初めてのメジャー・ヒットとなる4位を記録した作品です。 同曲は同チャートで16週間 National Top 40 に留まるロング・ヒットとなり『Go-Set』は翌1967年1月に本曲を“Best Single of the Year”に選出、その後ニュージーランドでNo.1、オランダで3位、そして日本で56位という思わぬ成功を収めたにも拘らず、この時すでに彼らはオーストラリアを出国していました…。
1971年にはビー・ジーズの初期の楽曲群をヒントにストーリーが描かれ、サウンドトラックの大半にビー・ジーズの楽曲を使用した映画『小さな恋のメロディ』(Melody / S.W.A.L.K)が公開され、オーストラリア時代から唯一選ばれたのが「Spicks and Specks」でした。 ただし劇中で使用されたのはビー・ジーズが歌唱したオリジナルではなく、『Richard Hewson Orchestra With Children From Corona School』による演奏&少年少女によるスキャットです(映画ver.は本記事最下へ)。 ビー・ジーズのオリジナルがやや“淋しげ”なのに対し、映画ver.は歌詞に捉われる必要がないからか“明るく爽やか”で、私は2013年にマイケル・ブーブレの「イッツ・ア・ビューティフル・デイ」(過去ログ)を聴いたとき本曲のことが頭に浮かびましたが、彼もビー・ジーズの「To Love Somebody」をカバーしているくらいなので、きっと「Spicks and Specks」も知っているでしょう。
~ Story ~
映画『小さな恋のメロディ』は日本でも人気が高く、サウンドトラックも秀逸で(ビー・ジーズの初期のベスト盤のような選曲)本ブログで何年も特集してきましたが、本項では“ビー・ジーズ以外の曲”にスポットを当ててみましょう。 ビー・ジーズとクロスビー、スティルス、ナッシュ&ヤング以外の楽曲は【Richard Hewson Orchestra】が演奏を務めました。 リチャード・アンソニー・ヒューソンはイギリスの音楽プロデューサー/マルチプレイヤーで、ビートルズのアルバム『レット・イット・ビー』では「The Long And Winding Road」(過去ログ)「I Me Mine」のアレンジなどを手掛けています。
次は、「Fのロマンス・テーマ(Romance Theme in F)」。 メロディが母、祖母に“痴漢に遭った?”と問い詰められる(3人が見ていたテレビドラマのBGM)勿体ない使われ方をしていますが、楽曲は恋愛映画の主題曲にできそうなくらいの名曲です。 (個人的には、ダニエルがメロディと出逢い心を奪われる“バレエのシーン”が合うと思う…) 日本では、1989年頃までテレビ東京『木曜洋画劇場』エンディングテーマ曲に使用されていました。
最後は、「1日中踊ろう(Working on It Night and Day)」。 リチャード・ヒューソン・オーケストラ名義で唯一のヴォーカル曲で、【With Barry Hewson】とあるので、リチャードの身内かもしれません。 パーティーか何かでダニエルがメロディをダンスに誘い、見事に成功するシーンに使われています。 一方オーンショー(ジャック・ワイルド)はミック・ジャガーを彷彿させるルックスで、劇中でも女の子たちがミックのポスターにキスして盛り上がるなどモテないはずはないのですが、実際に全くモテない理由がこの場面からわかるでしょう。
~ Epilogue ~
「Spicks and Specks」は、作品のタイトルでありながら謎めいた言葉です。 【speck】は“小片”で通るとして、【spick】は名詞だと“スペイン系アメリカ人(侮蔑用語)”で全く意味が符合せず、形容詞の“完全にきちんとしていて清潔である”なら何とか概念をイメージ可能で、【The spicks and the specks】を“美しく小さな欠片たち”としました。
劇中ではビー・ジーズのオリジナルは使用されておらず、歌詞の無いリチャード・ヒューソンver.が“休み時間に子どもたちが遊んでいるシーン”に重ねられています。 子どもの歌声と鼓笛隊風のアレンジが長閑な学園風景にとても合っており、このシーンを「Spicks and Specks」と題したことからも、“美しく小さな欠片たち=子どもたち”のメッセージが伝わってくるでしょう。
The spicks and the specks 僕の人生で過ぎ去っていった Of my life 've gone away 美しく小さな欠片たち
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