~ Lyrics ~ Writer(s): Sting /訳:Beat Wolf 一つの呼吸、一つの流れと共に あなたは知るだろう シンクロニシティについて 眠りの恍惚(trance)、夢うつつの舞踏(dance) 分かち合う情事(romance)と共に シンクロニシティのことを [Chorus] 結合の原理が 目に見えないものを繋ぎ合わせる 殆ど知覚されることなく 言葉で尽くせない何か 科学は感知せず 論理はあまりに頑な 因果的な結合 無敵のものなど何もない もしこの悪夢を共有するなら 僕らは抱き得るだろう “スピリタス・ムンディ”の夢を もしあなたが考え、行動するなら “ミッシング・リンク”について それが、シンクロニシティ [Chorus] 僕らがあなたを知り、彼らが僕を知っている 超常的な感覚 それがシンクロニシティ 星が流れ、電話が鳴り すべてが結びついている それが、シンクロニシティ [Chorus] 深く、広く結びついている あなたの心の中で それがシンクロニシティ 理由なき結果 亜原子の法 科学の休止 それが、シンクロニシティ [Outro] 意味ある偶然の一致…~ 概要 ~ 「シンクロニシティー」はイギリスのロック・バンド、ポリス1983年の5thアルバム
『シンクロニシティー』 のタイトル曲で英米でのシングル・カットはありませんが、日本では独自編集で2ndシングル(B面は「Someone To Talk To」
)として発売されました。
原題が「Synchronicity I」とあるように同アルバムには
「Synchronicity II 」 も存在し、過去ログで紹介しました。
「I」と「II」の関連 について、スチュワート・コープランドは“説明を求めたがスティングは真っ向から拒否した”と語っており、真意はメンバーにも知らされていないようです。
一方アンディ・サマーズはもともと「I」と「II」には関連があると考えており、“「Synchronicity」には『The Loch』(スコットランド方言で湖の意味)と呼ばれるセクションがあり、
「I」の最後にネス湖の怪獣のような音を入れて「II」に入る予定だった” と言及し、それが実現しなかったのは“マイルズ(コープランド)がそれを好まなかったから”と語っています。
(怪獣の音を入れると安っぽくなると思うので、個人的にはスチュワートの意見に賛成)
実際のアルバム『シンクロニシティー』に於いて「I」はA-1、「II」はA-6(A面の最終曲)に配置され、これらがアルバム全体(特にA面)に良い意味での
緊迫感 を及ぼしています。
ポリスは本作の翌1984年1月に活動停止を宣言していますが、レコーディング時すでに
スティングとスチュワートの関係は半ば崩壊状態であったこと、
スティングが夫婦問題を抱えていたなど(
「見つめていたい」 へ直接的に反映)、そうした彼らの周辺に漂っていた不穏な空気が一触即発の危機感となって作品に影響を与えていたのかもしれません。
私はアルバムの「Synchronicity I」~「Walking In Your Footsteps」
の流れが好きなので、同曲も併せてお届けいたします。
ポリスは本作後間もなく活動停止しているため本曲のライブ映像は貴重なので、視聴可能なうちにお楽しみください。
VIDEO VIDEO VIDEO VIDEO ~ Story ~ A connecting principle 結合の原理が Linked to the invisible 目に見えないものを繋ぎ合わせる 本曲のテーマである
【synchronicity】 は分析心理学(ユング心理学)で著名な
カール・グスタフ・ユング が提唱した概念で、日本語では
『共時性』 などと訳されている言葉です。
『共時性』とは
“意味のある偶然の一致” で、例えば…
A star fall, a phone call 星が流れ、電話が鳴り といった
一見何の因果もない複数の事象が同時的に発生し、そこに
互いの類似性や共通性がある(あると推察される・感じられる)場合にこの概念が用いられます。
ユングはその著書『シンクロニシティ』(1952年)の中で、彼がカウンセリング治療していた患者が夢で黄金のスカラベ(コガネムシ)をもらったことを告白したその瞬間、背後の窓を優しく叩くような音が聞こえ、振り向くと窓にコガネムシがいた自らの体験事例を紹介しています。
こうした現象に“意味のある偶然の一致”を見出すのは個人的な主観に過ぎないとの見方もできる一方、ユングはノーベル物理学賞を受賞した量子物理学者ヴォルフガング・パウリと協力してシンクロニシティを分析し、
“人生はランダムな出来事の連続ではなく、より深い秩序の表現である” と確信していたそうです。
そして、シンクロニシティの概念と接点がありそうといえるのが…
We can dream spiritus mundi 僕らは“スピリタス・ムンディ”の夢を抱き得るだろう The missing link, “ミッシング・リンク”について 【Missing-link】 は
“失われた環” で、ある古生物の祖先A種と子孫C種の存在が化石などにより既に確認されているものの、C種が存在するために不可欠と考えられる
AとCの中間的な特徴を持つB種の化石が発見されていない状況 を指す言葉です。
例えば進化論を発表したチャールズ・ダーウィンはヒトとサルを結ぶミッシング・リンクがあることを確信していながら、当時はその存在を証明できておらず、その後の発掘調査によって猿人(アウストラロピテクス)、ジャワ原人や北京原人、ネアンデルタール人、クロマニヨン人などの化石が発見されました。
つまりシンクロニシティも、ミッシング・リンクも“(その時点で)未証明の仮説”に過ぎませんが、だからといって“ただの偶然/証拠が無いから存在しない”で終わらせてしまったら文明の発展は著しく停滞することになるでしょう。
『共時性』も、『失われた環』も“目先で明らかでない真実を洞察し探求する”ことに本質がある のです。
また
【spiritus mundi】 はラテン語で、日本語だと
“世界(宇宙)の霊魂・精気” です。
『精気』は“万物の根源の気” であり、古代からルネサンスにかけて医学・生理学の分野で心臓には「生命の精気」が活力を与え、脳では「霊魂の精気」が精神活動を生み出すなど、
“人間の身体と霊との媒体” として重要な役割を果たしていると考えられていました。
更に、『プラトニック・ラブ(amor platonicus;精神的恋愛)』の言葉の祖としても知られる15世紀イタリアの哲学者/医学者でプラトン・アカデミーの中心人物
マルシリオ・フィチーノ (Marsilio Ficino)は、
宇宙の星々が地上世界と人間の健康に影響を与える媒体となる【spiritus mundi】が存在 すると考え、地上の事物であるお香や葡萄酒・音楽などを病人の精気に働きかける治療を体系づけました。
霊魂とか精気とか言われてもピンとこない方も多いと思いますが、“音楽が元気を与える”と言われればその効果が理解できるでしょう?
The Second Coming! Hardly are those words out 再臨!その言葉が浮かぶや否や 発せられるや When a vast image out of Spiritus Mundi 世界精気の巨大な化身が Troubles my sight 私の視界を遮る こうした【spiritus mundi】と【synchronicity】の概念を反映した文学作品の一つとして、20世紀の英語文学で最重要な詩人と評される
ウィリアム・バトラー・イェイツ が1920年に発表した詩
「Second Comming」 があり、スティングの「Synchronicity I」「Synchronicity II」はこの詩から着想を得ているといわれます。
キリスト教の世界に於いて
【the Second Coming】 は
“キリストの再臨” を意味しますが、同時にそれは
“世界の終わり” でもあり、
『マタイによる福音書』 によるとイエスは
その“前兆”として民族の対立や戦争、地震や飢饉ほかあらゆる災いが起きる ことを弟子たちに説いています。
イェイツの詩では災いの化身として“人の頭と獅子の胴体を持つ怪物”が、スティングの「Synchronicity II」にも当時世界的注目を集めた“スコットランドの湖に潜む怪物”が登場しており、これらは新約聖書の預言書『ヨハネの黙示録』に描かれる“竜と獣”をイメージさせるでしょう。
イェイツが「Second Comming」を創作した時代は『ロシア革命』や『第一次世界大戦』『スペインかぜ』など未曽有の世界的大事件が相次いで発生した時代であり、恐らくキリスト教徒の多くが“世界の終わりの予兆”を連想したことでしょう。
それから百年後の
現代の世界が直面している『コロナ・パンデミック』『進行する地球温暖化』『原発が大地震や戦争に巻き込まれた時の災害リスク』は、“より深刻で現実的な世界の破滅”を内包している ように思えてなりません。
「シンクロニシティー」 VIDEO ~ 『朝日記者の自殺』と『衆院選の結果』は、何かもっと深い所で“根”がつながっている ~ 私にとって
今回の衆院選 は安倍政権以来の
『嘘をつく政治との決別意思を国民が示せるか』を重要視 していましたが、嘘をつく政治が長年続くことへの有権者の危機意識は薄く投票率は戦後3番目の低さで、
むしろ『嘘をつく勢力の議席をより増やす結果』 となってしまいました。
組織のトップが嘘つき ならば、
配下も全て「トップは嘘をついていないという嘘」をつき通さなければならず 、それがもたらす不幸は「公文書改ざんによる証拠隠滅」をさせられ心を病み命を絶った『森友事件の赤木さん』の事例が象徴的で、
内閣総理大臣や官邸・省庁が嘘つき ならば、
その悪影響は全国の官民組織のみならず末端の一国民にまで及ぶ ことはコロナ対処で多くが痛感したはずです。
道理に基づく組織 であるなら
“大きな権限を預かる者ほど重い責任を負わなければならない” はずなのに、『原発の安全神話』で国民を欺き「世界最悪級の原発事故」を招いても、『政官財の私利優先・棄民』により「コロナで1万8000人以上の国民の命が犠牲」になっても
“権力者が責任を取らずに許容されるこの国” って何なのだろう…?
朝日新聞33歳記者が“上層部批判”を遺して自殺した そんな思いに沈んでいた中で『文春』が報じたニュースは、直接
今回の衆院選の結果と 関係が無いのに、
何かもっと深い所で“根”がつながっている 気がしてなりませんでした。
亡くなったのは朝日新聞大阪経済部のキャップを務めていたA記者 で、彼が
10/1に書いた「パナ社長『期待の人まで早期退職を…』 組織改編で1千人超が応募」の記事 に対し
同経済部長(A記者の自殺後に異動)の叱責 があったとされ、
A記者は
10/4に次のような複数のツイート を残しています。
〈重要な事実を探るために、権力者に近づくことはありますし必要です。ですが、なぜその記事をのせるのか、読者に堂々と説明できる論理がなにより大事 だと思う〉 〈紙面に意図的にのせて、権力者のご機嫌を取ってもたらされる情報 って、本当に読者が求めているものなのかな。。トモダチだから書くってなったら、政権を「オトモダチ人事だ」って批判できなくなる のでは〉 〈言うこと聞かない不良社員かもしれないけど、読者を一番に考えていると感じさせてくれたら、結構無理して働いてきたし指示にも従います。せめてうまく説得して、だましてほしいです〉 そして
10/6早朝、A記者は大阪市内のマンションから飛び降り 、
同日7時00分に“10/1とニュアンスの異なる”当人名義の「パナソニック、新体制が始動 持ち株会社化に向け、8事業に再編」の有料記事 が配信されていました。
背景には
「パナソニックが朝日新聞に毎年多額の広告を出稿する大手クライアントである」 ことが指摘されており、
その関係性を忖度した記事を書くよう上司に要求 され、その不満を吐露したのが上のツイートと思われます。
ただ私の読んだ限りでは、
「パナソニックの会見発表を伝えただけのようなNHKの10/2記事」 に比べ、
A記者の10/1の記事 は〈(分社化後の子会社での)
給与は(中略)今より下がる 社員も出る見込み〉〈子会社間の
異動のハードルも格段に高く なるとみられている〉など内部取材が加えられていて、
“実情(人件費削減目的?)”が伝わる ように感じました。
一方
A記者の10/6の記事 では、〈分社化による意思決定の迅速化〉〈事業の専門性を高めて「先鋭化」〉〈事業会社には10年先を見据え、競争力を高めてもらう〉など
“生産性向上のための前向きな再編”のニュアンスが強く 、10/1の記事と読み比べると「どちらが真実?」と困惑せざるを得ません。
(
ちなみに
パナソニックの2021年3月期の連結業績は売上高 6兆6980億円で、19年3月期から約1.3兆円減で25年ぶりの低水準 )
今回の『朝日記者の自殺』から、『森友事件の赤木さん』を連想した方もあるかもしれません…
何れも、
「組織または権力者の利益を守るため嘘を強要され命を絶ち」 ました。
しかし自殺はともかく、「関係先との“不当な”配慮」は省庁や報道機関に限らず一般の民間団体や私的人間関係にも珍しくないでしょう。
日本は21世紀の現在も『ムラ社会』 であり、学校や親は子どもに「弱い者いじめは悪」と教える一方で、
少なからずが村長(むらおさ)の意向に逆らった者を村八分にする“悪事”に加担、または許容 します(赤木さんの絶望の一つはそこにあったのではなかろうか…)。
私が先に、衆院選の結果と朝日記者の自殺を「何かもっと深い所で“根”がつながっている」と言及したのはそのことであり、
「嘘が日常的なムラ社会で暮らす日本人は嘘をつく権力に抵抗感が薄い」から こそ
「嘘をつく勢力が議席を増やす」 のでしょう。
毎年発表される世界幸福度ランキングで
日本は恒常的に幸福度が低い ことが報告され(2021年は56位;G7で断トツの最下位)、私はムラ社会が大きな原因と考えていますが、それを招いているのは私たち
国民自身が嘘をつく権力を許容しているから に他ならないのです。
いろんな人がいろいろな嘘をついている。 子供の頃から「嘘をつくな」と言われてきたのに嘘をついている。 陰謀も隠蔽も改ざんも粉飾も、つまりは嘘。 世界中にこれほど嘘が蔓延した時代があっただろうか。 いい年した大人が嘘をつき、謝罪して、居直って恥ずかしくないのか。 この負の連鎖はきっと私たちをとんでもない場所へ連れてゆく。 嘘に慣れるな、嘘を止めろ、今年、嘘をやっつけろ。 (2019年1月 宝島社・企業広告のコピー) スクープ解説!これでは自民党や大企業を批判できない・・・朝日新聞の33歳の記者が自ら命を絶った裏にあるパナソニック広告と1000人リストラ記事問題。元博報堂作家本間龍さんと一月万冊 VIDEO 最後までお読みいただき、ありがとうございました ♪
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