I Wish~洋楽歌詞和訳&解説

80年代の洋楽ロック・ポップス&ビートルズを中心に、歌詞の和訳と解説+エッセイでお届けします

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Beatles(the other songs)


John Lennon


Paul McCartney


Wings


George Harrison


Ringo Starr


「トゥ・オブ・アス」ビートルズ

2021.11.21

category : Beatles & Solo

The Beatles - Two Of Us (1970年)

【home】への帰り道がわからなくなった【I】と【You】の物語。…でも何故そんなことに?

《解説記事を更新》いたしました。【続きはこちら>>】をクリックしてご閲覧ください。


~ Lyrics ~

Writer(s): Lennon–McCartney /訳:Beat Wolf

[Verse 1: Paul & John]
僕ら二人、宛てもなく“riding”
誰かが苦労して稼いだお金を使い果たした
君と僕、“Sunday driving”
辿り着けず、彷徨う
家への帰り道

[Chorus: Paul & John]
家へと向かう途上
我が家への帰り道
僕らは、我が家を目指し進んでいる

[Verse 2: Paul & John]
僕ら二人、何枚も葉書きを宛て
手紙を書いて壁に飾った
君と僕、マッチを燃やし酒を奢(おご)り合った
家への帰り道

[Chorus]

[Bridge: Paul]
君と僕の思い出は
この先に延びる道より長い

[Verse 3: Paul & John]
僕ら二人、レインコートを身に着け
太陽の下、独りぽつんと立った
君と僕、宛てもなく紙切れを追いかけた
家への帰り道

[Chorus]
[Bridge]
[Verse 3]
[Chorus]

[Outro]
僕らは、我が家を目指し進んでいる
それを信じよう
Goodbye



~ 概要 ~

「トゥ・オブ・アス」は、ビートルズが事実上解散した後の1970年5月8日に発売された12作目のオリジナル・アルバム『レット・イット・ビー(Let It Be)』の収録曲です。
後期には珍しくポール・マッカートニーとジョン・レノンがほぼ全編にわたりコーラスを展開、作者もレノン=マッカートニーですが、実際はポールが単独で創作しています。

本曲は元々、ビートルズが設立したアップル・レコードの所属でポールがプロデュースしていた【Mortimer】というフォーク・トリオのデビュー・シングルとする予定で、この時点でのタイトルは「On Our Way Home」でしたが、結局この録音はリリースされませんでした。
ビートルズに於いては1969年1月2日から始動した『ゲット・バック・セッション』で演奏され、その過程でタイトルが「On Our Way Home」→「Two Of Us On Our Way Home」→「Two Of Us」と短期間で何度も変更されています。
一般に知られる「Two Of Us」はアコースティック・ギター中心のややスローなフォーク・ロック・ナンバーですが、トゥイッケナム・スタジオで演じられた当初のスタイルはエレクトリック・ギターを使用した軽快なロック・ナンバーで、一連の過程をドキュメンタリーとして記録した映画『レット・イット・ビー』のリハーサル映像でジョンとポールは1本のマイクに向かい合って歌い、ポールはエルヴィス・プレスリーをマネし、ジョンも体をくねらせ大げさなアクションでギターを演奏するなど、昔の二人に戻ったような印象です。

同年1月24日からはアップル・スタジオで正式なレコーディングが始まり、同日録音された本曲の音源(ザ・ビートルズ・アンソロジー3に収録)ではアコースティック・スタイルで演奏されています。
その中でポールが歌詞にはない“Take it, Phil”という言葉を唐突に発していますが、本セッションのテーマは“Get back(原点に返ろう)”であり、【Phil】とはポールとジョンのヴォーカル・ハーモニーに多大な影響を与えたエヴァリー・ブラザースのフィル(Phillip)・エヴァリーを指していると考えられています。
「Two Of Us」は1月31日までに12テイク録音されましたが(アルバム『レット・イット・ビー』にはその第12テイクを使用)、この前日は“ビートルズ最後のライヴ・パフォーマンス”として有名な『ルーフトップ・コンサート』が行われた日であり、映画『レット・イット・ビー』に収録されたその翌日4人が一緒に演奏した「Two Of Us」は“映像に残る最後のビートルズの演奏”です。

ゲット・バック・セッションで録音された音源は、ローリング・ストーンズやレッド・ツェッペリンなどでエンジニアを務めたグリン・ジョンズに託され、1969年5月28日にアルバム『Get Back』のマスター・テープが完成しました。
しかしその後ビートルズ側の方針の二転三転により再録・再編集を余儀なくされて収拾不能となり、1970年3月にフィル・スペクターがプロデューサーに就任、『Get Back(原点に返ろう)』のはずが『Let It Be(あるがままに)』として発表されることとなりました。
これを不服としたポールが自らのソロ・アルバムで『Let It Be』の発売を阻害しようとし、2003年にフィル・スペクターの“加工”を排した『Let It Be... Naked』を発表したことはファンもご存じでしょう。


 
 



~ Story ~

I Dig a Pygmy by Charles Hawtrey and the Deaf Aids
チャールズ・ホートリーとデフ・エイズの「I Dig a Pygmy」
Phase one, in which Doris gets her oats
ドリスがエッチするフェーズ1

記事冒頭の『ネイキッド』ver.にはありませんが、アルバム『レット・イット・ビー』ver.演奏前にジョンが発する言葉です。
これはジョンらしいナンセンスなジョークで、元々は「Two Of Us」での発言ではなく、1969年1月24日に同アルバム収録の「Dig A Pony」のリハーサル時に発したものと言われます。
(「Two Of Us」の前に置いたのはフィル・スペクターの編集による)
私はこのジョンの発言を『サージェント・ペパーズ』方式の実在しない変な名前のバンドの曲紹介(のジョーク)と解していますが、チャールズ・ホートリーは実在したイギリスのコメディアン俳優で、現在も本人の写真とこのフレーズの入ったTシャツがネットで販売されています。


Two of us riding nowhere,
僕ら二人、宛てもなく“riding”
You and me Sunday driving,
君と僕、“Sunday driving”

ポールは本歌詞について、創作時の恋人で1969年3月12日に妻となるリンダ・イーストマンとイギリスの田舎町を“目的地を決めずドライブ”したことを参考にしたと、インタビューで語っています。
一方、歌詞に登場する言葉の随所にファンは“ビートルズの歩んだ道”を抱かずにはいられないでしょう…
1965年の「Day Tripper」には【Sunday driver, yeah】の歌詞があり、【riding】といえば「Ticket to Ride」を連想させます。


Two of us wearing raincoats
僕ら二人、レインコートを身に着け
spending someone's Hard earned pay
誰かが苦労して稼いだお金を使い果たした

【レインコート】といえば『Help!』のジャケットであり、下段は素人経営の『アップル』や悪徳マネージャーによって巨額の負債とビートルズの版権を失った問題を思い起こさせます。
他にも50-60年代のリヴァプールのバーでは、他人の最初の一杯をおごる礼儀作法を【lifting the latch】と言ったそうです。
つまり【Two of us】とは50-60年代のリヴァプールで共に過ごした二人であり、この時点で多くの思い出を共有するポールとジョンと考えるのが自然でしょう。


We're going home
僕らは、我が家を目指し進んでいる

この頃のポールといえば「The Long And Winding Road」「Golden Slumbers」ほか、【go home】な曲ばかり創作しており、つまりは『Get Back』です。
ポールとジョンは少年時代の1957年に出会い、以降バンドメイトとして家族以上の時間を共に過ごしてきましたが、コンサート活動の休止や、レコーディングもオーバー・ダビングの進歩により4人が共に過ごす時間が激減、それに伴いメンバーの結束も急速に失われてゆきました。
これに危機感を抱いたポール4人の結束を取り戻す解決策として見出した答えが『go home / get back』であり、4人が共に過ごす必然の生じる【ライブ】と【オーバー・ダブ禁止】だったわけです。


Two Of Us (1969 Glyn Johns Mix) / Two Of Us (2021 Mix)




~ Epilogue ~

通常ならポールとジョンに及ぶカバーなど私にはあり得ませんが、一つだけ例外があります。
それは元 'Til Tuesday のエイミー・マンと、その夫マイケル・ペンによる「Two Of Us」です。
このカバーは2001年公開の映画『アイ・アム・サム(I am Sam)』のテーマ曲で、“私の最も好きな映画の一つ”というひいき目もあるかもしれません(サウンドトラックには他にもビートルズの楽曲のカバーがちりばめられている)。

この映画の素晴らしさの一つは、“慕い合いながらすれ違い彷徨う二人”という「Two Of Us」の本質と、映画の本質が見事に合致している所です。
主人公のサム(ショーン・ペン)は知的年齢が7歳のシングルファーザーで、その娘ルーシー・ダイアモンド(ダコタ・ファニング)が7歳を迎えることで関係に葛藤が生じ、行政に養育能力なしと判断され深く愛し合う親子が引き離されてしまう…というストーリー。



映画「アイ・アム・サム」日本版劇場予告2

興味深いのは、養育権を争う裁判でサムの弁護士を務めたリタ・ハリスン(ミシェル・ファイファー)の存在で、彼女はサムを養育能力なしと行政が判断したすべての要素で理想的な保護者である一方、自身の仕事の忙しさもありその家庭に於いて(サムが父親として娘に強く慕われる)愛情に欠けた母親として対照的に人物設定されていることです。
養育能力なしと行政に判断されないもののリタは内心に息子との“心のすれ違い”に苦しみを抱えており、サム親子との関わりを通し自分に欠けていたものに気づき、行いを改めることで“心のすれ違い”から救われてゆきます。
もしかしたら本作で問い掛けているのはサム親子の問題以上に、実社会に於いてより多くの親子関係に該当するであろう“リタ親子の心のすれ違い”の方なのかもしれません。

そして、本作の背景に流れる「Two Of Us」と数々のビートルズ・ソングは、彼ら“慕い合いながらすれ違い彷徨う二人”を包み込み見守っているかのようなやさしさに溢れています。



Aimee Mann - Two of us

最後までお読みいただき、ありがとうございました ♪
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tags : 1970年 フォーク・ロック 葛藤 レット・イット・ビー 

コメント

ビートルズ最後のアルバムのオープニング曲でしたね。アコースティックな調べから始まるどこか哀愁漂うラブナンバー、ジョンとポールのツインリードボーカルで二人でほのぼのな雰囲気で歌っています。「僕ら二人でどこかへドライブしよう」という内容は「リンダとの思い出を曲にしたんだよ」とポールは語っているようです。リンゴの鼓笛隊の様なカタカタカタというドラムにも癒されますね。

2021.11.22  ローリングウエスト  編集

ローリングウエストさん

さすがにお詳しいようですね。
おっしゃるとおりジョンとポールのツインヴォーカルですが久しぶりのスタイルで、デビュー当時は女の子が悲鳴を上げるほどさわやかだったのにここでは濃いダシが出ていて、、わずか数年でよくもこんなに変わるものだと思います。
彼女らは当時のビートルズをどう思っていたのだろうか…。

2021.11.23  Beat Wolf  編集

こんにちは。

僕のようにビートルズをほとんど聴かなかった人間には、これもビートルズ?っていう曲です。力が抜けたボブ・ディランのような雰囲気です。上のRWさんの説ならば、確かに幸せなカップル(いや、男だけか?笑)のウキウキした雰囲気が出ていますね。

2021.11.24  忠      編集

忠さん

フォーク・ロック調ですからね。ビートルズにはいろんな曲調があります。
まだ解説記事公開前なので明確なことは書きませんが、私は別の解釈をしています。
興味があったらご拝読ください。

2021.11.24  Beat Wolf  編集

なるほど・・・・なんて奇怪な物語なんでしょうか?ビートルズ内部での意見の対立、そこに録音エンジニアやプロデューサーの思惑が加わって奇怪な経過をたどるわけですね。さらに後々の人達がそのラビリンスに迷う。そうこうしているうちに全く別次元の世界で使われ、映像がダビングされて人々を感動させていく。
ちょっと違うかもしれませんが、「北京で蝶が羽ばたくと、アメリカでハリケーンが起こる」ような、最初のちょっとした違いや曖昧さが結果に大きく影響するような。そういう意味では何でも一人で作って行きたいアーティストの気持ちも分かります。

2021.11.27  忠      編集

失礼します。

映画「アイ・アム・サム」を見ました。他人ごとではない・・・・という印象です。
この映画については多少知っていましたが見たことはありませんでした。有難うございました。
そういえばディズニー映画でビートルズをするそうですね。三部作だそうですが何とか見てみようと思います。

2021.11.27  忠      編集

まとめて忠さん

この曲自体は純粋にジョンとの関係だと思います。
ただ「エンジニアやプロデューサーの思惑」ではなく、ポールがエンジニアのグリン・ジョンズを雇い『Get Back』の趣旨に合わせライブ・サウンドを構築させましたが、その後ジョンとジョージがフィル・スペクターを雇いポールに無断で音を加工した『Let It Be』にしてしまったので、ポールが憤慨したのです。

「アイ・アム・サム」ご覧になりましたか。
「障がい者の問題」として見れば他人事ですが、「家族とのすれ違い」とみれば誰にでもあることですね。
映画『Let It Be』は「解散直後」だったし映像が暗かったのでイメージもそんな感じでしたが、今回は『Get Back』で映像も内容も明るくしたようです。
ただディズニーなので「エンタメ化」が気になるところではありますが…。(笑)

2021.11.27  Beat Wolf  編集

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