「ウェルカム・トゥ・ザ・ジャングル」は、全世界で3000万枚以上を売り上げたガンズ・アンド・ローゼズ1987年7月の1stアルバム『アペタイト・フォー・ディストラクション(Appetite for Destruction)』の収録曲で、バンドの代名詞ともいえる作品です。
アルバムからは先行してイギリスで6月15日に「It's So Easy」がリリースされ(全英84位)、次いで9月28日に本曲がリリースされ全英67位止まり、アメリカではシングル発売さえままならずアルバムも8月29日の週にBillboard 200の182位でデビューするもののその後数か月で20万枚しか売れず、当時のゲフィン・レコード社長も“もうこのアルバムは放っておこう”とさじを投げたといいます。 背景には当時既にガンズのアルコールやドラッグをはじめとするトラブルメイカーぶりが方々で広まっており、アメリカのメディア王ジョン・マローンに“このバンドは良きクリスチャンを脅かす、これを放映したらケーブルのネットワークから落とす”とまで毛嫌いされ、当初MTVやラジオ局でガンズの曲が取り上げられなかった影響がありました。
こうした風潮に対し、ガンズをゲフィン・レコードと契約させた当事者であるトム・ズータウは“アルバムはミリオンはいける”と信じ、レーベルの創設者デヴィッド・ゲフィンに掛け合い直接MTVと交渉するよう説得し、ニューヨークの午前4時(ロサンゼルスの午前1時)という時間帯に「Welcome to the Jungle」を1回だけ放映する約束を取り付けることに成功しました。 僅かな機会であったにも拘らず反響は予想以上で、翌朝にはMTVにかつてない程の問い合わせ電話が殺到、これによりMTVも本曲をローテーションに組み込むようになり、ガンズが全米にその存在を知られるようになって1988年にシングル「Sweet Child o' Mine」(過去ログ)の全米No.1→アルバム『Appetite for Destruction』の全米No.1という大ブレイクに繋がっています。
この流れを受けて「Welcome to the Jungle」は1988年10月18日にアメリカでシングル・カットされ、Billboard Hot 100 で7位(89年の年間74位)を記録しました。 歴史的評価も高く、アメリカのローリングストーン誌『500 Greatest Songs of All Time は467位』、イギリスのQ誌『1001 Best Songs Ever 764位』、ケーブルテレビ・チャンネルVH1『40 Greatest Metal Songs 2位』、カナダのHM/HR専門誌(Brave Words & Bloody Knuckles)『The Top 500 Heavy Metal Songs of All Time 19位』と位置付けられています。
ギタリストのスラッシュは自叙伝の中で「Welcome to the Jungle」の創作過程について、彼が過去に母親の家で弾いていたリフをアクセルが思い出し、スラッシュが再現するとバンドもすぐに曲の基礎を作り、それに合わせて更にスラッシュが新しいギターパートを加えていったとしています。 ブレイクダウンを思いついたのはベーシストのダフ・マッケイガンで、自伝『It's So Easy (and other Lies)』によると彼が1978年に所属していたパンク・バンド【Vains】で初めて作曲した「The Fake」という曲からのものだそうです。
インパクトの強い「Welcome to the Jungle」は後世もメディアでの使用が極めて多く、特に1988年公開の映画『ダーティハリー5』での映像は本曲PV以上に強烈な映像となっています。 劇中ではジム・キャリーが人気のロック・スターとして“有名ホラー映画”のパロディのような撮影をしているシーンに使用され、しかもこの映画にはガンズのメンバーもカメオ出演しているのです!
Welcome to the jungle, ジャングルへようこそ we got fun and games 俺たちは“ファン・アンド・ゲームス”を手に入れた
【jungle】はヒンディー語の“原生林”から派生し、“非情な生存競争の場”や“大都会の物騒な場所”など広く表されます。 アクセルはアメリカ中西部インディアナ州ラファイエットで生育し1982年12月に20歳でカリフォルニア州ロサンゼルスに移住していますが、彼の友人の話によるとアクセルがヒッチハイクでロサンゼルスに到着しトラックから降りたたとき運転手の発した言葉が、【Welcome to the jungle】だったそうです。 PVでは、地方から出て来たような身なりのアクセルが都会の街路の交差点付近で長距離バスを降り、麻薬の売人らしき男(イジー・ストラドリン)に声を掛けられ無視する一方、セクシーな都会の女の子の脚に見とれ足を止める姿が描かれています。
【fun and games】は言葉のままの意味ですが合法・健全とは限らず、PV冒頭の映像は“違法・危険なお楽しみ”への入り口が大都会では極めて身近にあることを示唆しています。 その志向はロックやハード・ロックと親和性が高く、多くのロックスターがそれに溺れ、一部が還らぬ人となったことはロック・ファンならご存じのことでしょう。 とりわけガンズはその領域に於いて“世界で最も危険なバンド”と形容されたバンドであり、本歌詞の中にもそれを感じさせるフレーズが何か所も含まれています。
If you got the money, マネーさえ持っているなら honey, we got your disease ハニー、その病さえ受け入れる
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