I Wish~洋楽歌詞和訳&解説

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「しあわせの予感」ポール・マッカートニー&ウイングス

2022.05.27

category : Beatles & Solo

Paul McCartney & Wings - With A Little Luck (1978年)

あなたが欲しいのは“大きな葛籠(つづら)”、それとも“小さな葛籠”?ポールのオススメは…。


《解説記事を更新》いたしました。【続きはこちら>>】をクリックしてご閲覧ください。


~ Lyrics ~

Writer(s): Paul McCartney /訳:Beat Wolf

少しの幸運があればそれを助けられる
このひどい状況をやり遂げられる
少しの愛があれば、共にそれを築くこともできる
昂(たかぶ)る町の息吹を感じない?

[Bridge]
力を合わせれば、僕らは何だってできる(Together)
限界なんてない(There is no end...)
柳は荒ぶる風雨をしなやかに受け流す
柳にでききるなら、僕らだってできる
君となら…

少しの幸運があればそれを解決できる
上手くそれを着陸させられる
少しの幸運があれば、その硬い栓も開けられる
理解できないなんてない

[Bridge]
力を合わせれば、僕らは何だってできる(Together)
限界なんてない(There is no end...)
柳は荒ぶる風雨をしなやかに受け流す
きっとできる、君と僕なら

少しの後押しがあればそれを打ち上げられる
遥かなる大空へとそれを向けて
少しの愛があれば、それを一新できる
爆発する箒星の波動を感じない?

[Outro 1]
[Outro 2]



~ 概要 ~

「しあわせの予感」は、ビートルズがイギリスでの最多売上記録を有していた「She Loves You」の記録を塗り替えたポール・マッカートニー&ウイングス1977年11月の「夢の旅人」に続く待望のシングルで、1978年3月の6thアルバム『ロンドン・タウン(London Town)』に収録された作品です。
アルバム発売直前に1stシングルとしてカットされ「夢の旅人」に続く全英1位とはならなかったものの(5位)、アメリカでは Billboard Hot 100 で2週No.1(年間18位)と、ウイングスとして5曲目の全米No.1に輝きました。

1978年といえば、世界中を巻き込んだ『サタデー・ナイト・フィーバー』ブームの年であり、ビルボード・シングル・チャートでは1977年12月24日の「愛はきらめきの中に」から、ウイングスがその座を奪う同年5月20日の前週(5/13)まで、ビー・ジーズの所属するRSOレーベルが21週連続で1位を独占し続けていました(このうちビー・ジーズが15週、弟のアンディ・ギブが2週)。
“ビートルズの1964年”に匹敵するような“旋風”に割って入ったポールも“面目躍如”ですが“敵もさるもの”、その後もRSOは更に「愛のデュエット」オリビア・ニュートン=ジョン、「シャドー・ダンシング」アンディ・ギブ、そして最終9/2の「グリース」フランキー・ヴァリまでで計31週間一つのレーベルがチャートのトップを独占し続けています。


「With A Little Luck」はポールがスコットランドの農場で書いた楽曲で、録音はカリブ海にあるヴァージン諸島の洋上、24トラックの移動式レコーディング・スタジオを設置したフェア・キャロル号というモーター・ヨット内で行われました。
帰英後ジミー・マカロック(g)とジョー・イングリッシュ(dr)がアルバム制作途中に脱退してしおり、ポールと妻のリンダ、デニー・レイン(g)の3人でアルバムを完成させています。
本曲ではギターが使用されておらず、メンバー3人がかりでのキーボード/シンセサイザーをメインとした編成となっており、“金属的な音”が入っていないため“ふわふわ”と微風に吹かれ雲か波の上でお昼寝してるような心地良さを覚えるでしょう。

「With A Little Luck」の特徴の一つに“長い間奏”があり、全編で5分45秒あるためラジオ局には短縮させた3分13秒の【DJ Edit】が配布されましたが、ラジオ局が好んでかけたのは編集されていない5分45秒ある正式 ver.だったといいます。
これは私も同感で、本曲の魅力は長い間奏の後ポールとコーラスが再び入ってくる瞬間が“待ち侘びていた人が帰ってきた”ような感慨を誘うのです。
【DJ Edit】はベスト盤などに使われることが多く、下に貼っておきます。

「With A Little Luck」は全米No.1ソングであり、ウイングスの『Wings Greatest』(1978)やウイングス+ポールの『All The Best!』(1987)、『Wingspan: Hits and History』(2001)などベスト盤の定番曲であるにも拘らず、不思議なことに直後の『Wings UK Tour 1979』やその後のポールのコンサートで恐らく演奏されたことがありません。
このためファンが触れることのできるアウトテイクはとても貴重で、一つは1977年の『London Town』セッションのデモ
もう一つは『1980年の日本公演のためのリハーサル映像』で、もしも“あの事件”がなかったら「With A Little Luck」が日本で披露されていたのでしょうか…。


 




~ Story ~

The willow turns his back on inclement weather
柳は荒ぶる風雨をしなやかに受け流す
We can make this whole damn thing work out
このひどい状況をやり遂げられる

不連続のラインをまとめて、ポールのメッセージを想像してみました。
ポールは柳に対し何らかの“教訓”を見出しているようで、後年にも母モーリーンを亡くしたリンゴ・スターの子供たちのために【willow】をモチーフに励ましの歌を創作しています。
日本にも【柳に雪折れなし】という諺がありますが、“柔らかくしなやかなものは、堅いものよりも、よく耐えたり丈夫であったりする”という意味で、本作にもそんなメッセージが込められているのでしょうか…。

英語にも類似表現が存在し【A reed before the wind lives on, while mighty oaks do fall(嵐の前に葦は生き続け、強い樫の木は倒れる)】や【Better bend than break(折れるより曲がる方がよい)】などがあります。

あなたは『硬くて強い』派、それとも『柔らかくしなやか』派?


With a little push we could set it off
少しの後押しがあればそれを打ち上げられる
With a little love we could shake it up
少しの愛があれば、それを一新できる

「With a Little Luck」の当初の邦題は「愛の幸運」だったとか…。
ただ愛にはいろんな愛があり、むしろ興味深いのは常に【it】を関連付けて綴られていることです。
これによって聞き手は愛に限らず、それぞれの人生、またはあらゆる局面で抱えた【inclement weather(荒天)】を想い起こすでしょう。

何かを【set off】(始める、引き起こす、〈ロケットなどを〉打ち上げる…)したり、【shake up】(揺さぶる、奮起させる、改革する…)するのは、大変なことです。
“地に静止しているものを空に上昇”させたり“既存を変える”には平静以上の“大きな力が必要”であり、その到達目標が高いほど、誰かの【push】や【love】が不可欠となるでしょう。

ポールがビートルズ解散から立ち直るために、リンダの助けが必要だったように…。



~ Epilogue ~

『ロンドン・タウン』の制作途中でメンバーが二人抜け、三人になってしまったことについて(リンダが出産・育児に入ったので実質デニーと二人)、当時ポールは次のように語っています。

これが2,3年前だったらこの先どうやってウイングスを維持していこうか随分悩んだだろう。でも今ではそう深刻な受け止め方はしていない。パーマネント・グループでなければ良い仕事が出来ないわけではないし、よい音楽を創ることが大切なのであって、それが出来るならグループの形態にこだわる必要はないと思う

この発言は、「With A Little Luck」に込められたメッセージと重なるような気がします。
ポールにとって絶対不可欠なパートナーは妻のリンダであり、彼女がミュージシャンとして素人同然である以上、彼と同格レベルの実績を持つプレイヤーがウイングスに加入することは難しいでしょう。
(実際ビートルズもデビュー前に実力不足のピート・ベストを解雇しているし、プロの世界とは本来そういうものである)
バンド・メンバーは活動に不可欠な【help】ですが、それはポール自身が世界の期待に応えられるだけの楽曲を創作できてこそ維持してゆけるのであり、その“領域”は滅多な人が助けられるものでもありません。
寧ろその“領域”に彼らの助けをアテにしているようではバンドどころか、“ポール・マッカートニー”自体が存続の危機に陥るでしょう。


With a little luck we can help it out
少しの幸運があればそれを助けられる
We can make this whole damn thing work out
このひどい状況をやり遂げられる

つまりポールが「With A Little Luck」に込めたメッセージの一つは、“運頼みにしてはいけない”なのだと考えます。
世界チャンピオンに素人が運任せで勝つことはまず不可能であり、自分の人生なのに他人の助力ばかりアテにしていたら成長しないし楽しくないでしょう。

もう一つは“少しの幸運に気づくことの大切さ”、だと思います。
どんなに優れた才能の持ち主でも、人一倍の努力をしても、運が無ければそれに見合った成果は得られません。
しかし“光が強いほど影も暗くなる”と言われるように、一時的に大きな幸運に恵まれ、それが故に小さな幸運を喜ぶことができなくなりその後、人生が暗転した人もあります。

自分が少しの幸運と、何気ない人の思いやりに救われていることに気づく…
そこから、「With A Little Luck」な人生が始まるのかもしれません。



「With A Little Luck」

最後までお読みいただき、ありがとうございました ♪
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tags : 1978年 ソフト・ロック 人生 メッセージ ウイングス 

コメント

久しく更新されていなかったので健康面で何かあったのかとちっと心配していましたが、また元気にブログが公開されて何よりです。ポールマッカートニー続きですね!、「しあわせの予感」(With A Little Luck)」(1978)の頃は、メンバーの脱退で3人編成となり、結束力にやや翳りが出てきていた時代でsyが、小生はウイングスの中ではこの曲と「ジュニアーズファーム」が一番お気に入りです!その後、愛妻リンダは乳癌に冒され1998年に亡くなってしまい、ポールの最も充実していたソロ時代の中で最も悲しい節目を迎えてしまいましたね。
(PS)イーグルス・デビュー50年を迎え「6人目のイーグルス」と呼ばれたJDサウザー、一般記事ではわが川崎市の穴場紹介を掲載していますのでまて是非ご来訪下さい。

2022.05.30  ローリングウエスト  編集

ローリングウエストさん

ご心配いただきありがとうございます。
自分としてはいつもどおりやっておりました。
もうすぐアレなのでポールを特集しています。
ウイングスの根本はポールの公私混同バンドなので、メンバーはやりづらかったと思います。
そこがファンにとっては魅力でもあるのですが、ヘンドリックスなど高いレベルでのプレイも聴いてみたかった気もします。

2022.05.30  Beat Wolf  編集

こんにちは。

あるプロ野球の監督がバッターボックスに向かう外国人選手に、
「Do your best!」
と言ったら、
「俺はいつだってbestを尽くしている!」
と言われたそうです。そういう時には、
「Good luck」
というのが正解なのだそうです(釈迦に説法ですが・・・・)。
人生を生き抜くには努力と幸運が必要なのでしょうが、大きな努力をしている人には小さな幸運で十分なのでしょう。

tagsにはソフトロックと書いてありますが、確かに微風に揺れる柳のようなしなやかな音です。

2022.06.01  忠      編集

忠さん

日本人は気軽に「頑張れ」と言いますからね。
当人は励ましつもりで使ってると思いますが、言われた人によっては「精一杯頑張ってるのに…」というギャップが生じたりします。
ただ「見返り」を期待するから人は、人に勝る努力をする気もします。汗水たらして働いた人ほど、宝くじで何億も当たった人を嫉みそうでしょう?(笑)
元々ポールはそういう曲が得意ですが、ウイングスは特に微風を感じます。

2022.06.01  Beat Wolf  編集

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