I Wish~洋楽歌詞和訳&解説

80年代の洋楽ロック・ポップス&ビートルズを中心に、歌詞の和訳と解説+エッセイでお届けします

STOP!
地球温暖化/気象災害激甚化
Lil Dicky - Earth
Lil Dicky - Earth1
Beatles & Solo
Please Please Me


With The Beatles


A Hard Day's Night


Beatles For Sale


Help!


Rubber Soul


Revolver


Sgt Pepper's


The Beatles


Yellow Submarine


Abbey Road


Let It Be


Magical Mystery Tour


Beatles(the other songs)


John Lennon


Paul McCartney


Wings


George Harrison


Ringo Starr


「ジャスト・ライク・ザット」ボニー・レイット

2023.02.10

category : Bonnie Raitt

Bonnie Raitt - Just Like That (2022年)

テイラー・スウィフト/ビヨンセ/アデルを退け本年グラミー【Song of the Year】に輝いた73歳

《解説記事を更新》いたしました。【続きはこちら>>】をクリックしてご閲覧ください。


~ Lyrics ~

Writer(s): Bonnie Raitt /訳:Beat Wolf

その男性は街区を一周りしていた…
最後に私の家の前で止まり
ドアをノックするまで暫く費やした
まるで、時間が彼のすべてであるかのように
“失礼ですが奥さま、お助けいただけませんか?
道順がよくわからないのです
オリビア・ザンドという人を探していて
ここで見つかるかもしれない、と人に聞いたのです”

私は食い入るように観察し、彼に尋ねた
“彼女に何のご用?”
…彼女の知りたいであろうことを話す、と言う
そして、私は彼をドアの中に入れた
こんなにすぐ人を信じる私ではない…
自分でも思いがけないことだった
でも彼の何かが、私に安心を与えたのだ
その瞳の中に…

人生は、何の前触れもなく変わり得る
もし私が目を離していなかったなら…
息子は、今もまだ私と一緒にいただろう
今日で25歳になっていた 
どんなナイフも、その染みを切り去ってくれない
どんな飲み物も、その悔いを溺れさせてはくれない
イエスが心の安らぎと恩寵をもたらす、と人は言う
あぁ、神は未だ私をお見つけくださらない…

彼は座って深呼吸し
私の顔をじっと見つめた
そして、私は失った息子の話を聞いた
あなたがどのようにしてこの世から消え去ってしまったのかを…
“僕は、あなたを見つけるために何年も費やしてきました
そして遂に、あなたに知らせることができました
僕の命を救ってくれたのは、あなたの息子さんの心臓です
そしてあなたは、僕たち二人に命を授けてくれました”

人生は、あっけなく変わり得る
天使の届けてくれたものをご覧なさい
私は彼の胸に頭を置き
再び息子との時間を共にした
これまでとても長い間、暗闇の中で過ごし
もう決して夜が終わることはないと思っていた
でもどうにか、恩寵は私を見つけてくれ
私も神を認めざるを得なかった



~ 概要 ~

ボニー・レイットは1971年にデビューしたブルース/R&Bを志向するアメリカのシンガー・ソングライターです。
半世紀に亘るキャリアでありながらこれまでの来日は2回と、日本ではあまり知名度は高くないかもしれませんが女性ミュージシャンとして高く評価された存在であり、グラミーを15回受賞、ローリング・ストーン誌は彼女を【100 Greatest Singers of All Time 第50位/100 Greatest Guitarists of All Time 第89位】に位置づけています。

「ジャスト・ライク・ザット」は、ボニー・レイット2022年の18thアルバム『Just Like That...』のタイトル・トラックです。
作者はボニー自身で、冒頭でも触れたとおり2023年2月5日(現地時間)に行われた『第65回グラミー賞授賞式』に於いて本曲で主要4部門の一つ【最優秀楽曲賞】を含む2冠、アルバム収録の「Made Up Mind」が【Best Americana Performance】を受賞し、計3冠に輝きました。
授賞式でボニーは“多くの人がこの曲に反応してくれました。ジョン・プラインへの愛ゆえです。そして、彼への愛こそがこの曲のインスピレーションで、物語を内面から語ることができました…”と感謝を捧げていますが、このジョン・プラインはボニーが“フォークの伝統を守る真のフォークシンガーの最高峰”と形容する長年の友人であり、2019年9月に『第18回アメリカーナ・オナーズ&アワーズ』で彼が受賞した際に彼女も1973年から歌い続けた思い出の「Angel From Montgomery」をデュエットし2020年4月7日に彼が急逝した経緯があります。

本アルバムは2020年の新型コロナ・パンデミック拡大に伴うロックダウンや行動制限が緩和されるようになった頃、ボニーが自分の居住地である北カリフォルニアに初めて自分のバンドを呼び寄せレコーディングを行なったものであり、コロナ・パンデミックでの経験がアルバム『Just Like That...』に投影されています。
「Made Up Mind」は“コロナ・パンデミック”を、「Living For The Ones」は“パンデミックへの悲観とその中でも生きてゆく強い決意”を抱かせるでしょう。
また「Love So Strong」はジャマイカで最も有名なレゲエ・スカ・グループの1つであるトゥーツ・アンド・ザ・メイタルズ(Toots & the Maytals)のカバーですが、そのリーダー、フレデリック・“トゥーツ”・ヒバート(Frederick ‘Toots’ Hibbert)は直前にコロナ陽性が判明し2020年9月12日に亡くなっています。
そして、「Just Like That」にインスピレーションを与えたジョン・プラインの死因もまた、新型コロナによる合併症でした。


 



~ Story ~

And just like that your life can change.
人生は、何の前触れもなく変わり得る

アルバム・タイトル『Just Like That...』の真意は、このフレーズに込められています。
前項で記したように本作の背景には、いまを生きる人々の殆どにとって人生で初めてとなる全世界を巻き込んだ大パンデミックが発生し、ボニー自身も何人かの大切な人を突然失った辛い経験がありました。

万人にとって理想は苦痛を伴わず“天寿を全うする”ことですが、現実は人智で防ぎようのない“天災”や、人為の結果による戦争・パンデミック・地球温暖化が及ぼす“人災”、また個別の人生に発生する事故や病気など、さまざまな障害が起こり得るものです。
人生に起こり得る災いに対し私たちが取り得る手段は、“まさか”を気に病んでも仕方がないと諦めるか、歴史や他人の“まさか”を教訓として未然に予防・軽減する対策を講じるか、ですが…。


If I hadn't looked away,
もし私が目を離していなかったなら…
My boy might still be with me now,
息子は、今もまだ私と一緒にいただろう

主人公にとっての“まさか”は、我が子を失ったことです。
大事に至らないまでも、目を離した隙にハッとしたことがある方もきっと少なからずおられるのではないでしょうか…。

しかし大事とは“取り返しのつかないこと”であり、どんなに悔い改めようと失われた生命を取り戻すことは不可能、愛ゆえに我が子の死を仕方がないと諦めることもできず、恐らく彼女は二十年ほども自らを“暗闇”の中へ押し込め続けてきたのだろうと推察できます。


And just like that your life can change.
人生は、何の前触れもなく変わり得る

しかし【Just Like That...】は辛苦を与えるばかりでなく、自ら下した“ある選択”により、彼女は天使から“まさか”の届けものを授かることになります…。



~ Epilogue ~

“素晴らしい愛と思いやりの物語に着想を得て、この曲を作りました。誰かの命を救うために愛する人の臓器を提供することを決めた寛大な人の物語です…”


これはグラミー授賞式でのボニーの言葉ですが、本歌詞は亡くなった息子の心臓を提供した女性が心臓を受け取った男性に会い、息子の心臓の鼓動を聞かせてもらったニュースに感動し、その話をもとにボニーが創作した物語でした。
愛する我が子の体を救命以外の目的で傷つけ臓器を取り出すという行為が親にとってどれほど辛いことか、察するに余りあるでしょう…。

一方で、生を終えて荼毘(だび)に付され物理的にこの世から消え去るはずの我が子の体の一部が別の生命を救い、その一部となってこの世に生き続けると捉えると、臓器提供は“される側”だけでなく、“する側”にとっても大きな意義があるようにも思えます。
そもそも自然界では、どんな生物も最後は自らの命が蓄えたものをすべて他者に与えることでその一切が無駄にならず、その後も何らかの生命を構成する成分として存在し続けるのですから…。

It was your son's heart that saved me
僕の命を救ってくれたのは、あなたの息子さんの心臓です
And a life you gave us both
そしてあなたは、僕たち二人に命を授けてくれました”


ところで、ボニーが心臓移植に関連する作品を発表したのは、今回が初めてではありません。
1989年にリリースした『Nick of Time』に収録の「Have a Heart」という楽曲があることをご記憶の方もあるでしょう。
「Have a Heart」はシングルとしても49位を記録しましたが、そのPVには心臓移植に関連する映像がフィーチャーされています(※「Have a Heart」自体は心臓移植を題材とした楽曲ではない)。

実は、本曲はボブ・ホスキンスとデンゼル・ワシントン主演の映画『私の愛したゴースト(Heart Condition)』のサウンドトラックにも採用されており、そのためPVに同映画の映像が多く編集されました。
同映画では急死したデンゼルの心臓が、心臓発作で倒れたボブに移植されますが、二人は恋敵の間柄であったためデンゼルがゴーストとなって化けて出てくるというコメディとなっています。

その作品も併せてお楽しみください。



Bonnie Raitt - Have A Heart

最後までお読みいただき、ありがとうございました ♪
スポンサーサイト



tags : 2022年 フォーク アコースティック 親子愛 大切な人を失った悲しみ グラミー最優秀楽曲賞 

コメント

こんにちは。

映画になりそうな曲ですね。歌詞も言い過ぎず、聞き手の想像の余地が大きいのも効果的です。

2023.02.11  忠      編集

忠さん

そうですね、それが一番よいと思います。何と言ってもグラミー最優秀楽曲賞ですから。

2023.02.12  Beat Wolf  編集

おおコチラもグラミー賞ネタでしたか!最優秀楽曲賞を獲得したボニー・レイットは初めて聞きました。73歳というのに上品な美しさといいカントリーですね~!今回は日本からは2人が受賞快挙(宅見将典、小川慶太)の両氏が栄養に輝いたのも嬉しかったです。アデルが主要3部門の一角に期待していたんですがね~!でも「最優秀ポップ・パフォーマンス(ソロ)賞」を受賞できてよかったです。

2023.02.14  ローリングウエスト  編集

ローリングウエストさん

彼女があの顔ぶれの中から受賞したというのも驚きですが、ソングライターとして評価されたことは彼女自身とてもうれしかったようです。
アデルは何年か前に受賞しているし、またいくらでもチャンスがあると思うのでこれから頑張ってくれるでしょう。

2023.02.15  Beat Wolf  編集

コメントを投稿


管理者にだけ表示を許可する
 
PrevEntry |  to Blog Top  | NextEntry
プロフィール

Beat Wolf

Author:Beat Wolf
ジャンルを問わず音楽が大好き♪


参加ランキング
最新記事

全タイトルを表示
Artists
リンク
このブログをリンクに追加する
☆『相互』をご希望の方は、お気軽に♪
最新コメント
QRコード
QR

Copyright ©I Wish~洋楽歌詞和訳&解説. Powered by FC2 Blog. Template by eriraha. Photo by sozai-free 2000px.