I Wish~洋楽歌詞和訳&解説

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「シャタード・ドリームス」ジョニー・ヘイツ・ジャズ

2023.02.17

category : Johnny Hates Jazz

Johnny Hates Jazz - Shattered Dreams (1987年)

“Shattered Dreams”…あなたがくれたすべて。「反逆のヒーロー」と双璧を成すJHJの代表曲

《解説記事を更新》いたしました。【続きはこちら>>】をクリックしてご閲覧ください。


~ Lyrics ~

Writer(s): Clark Datchler /訳:Beat Wolf

あなたの約束なんてもうたくさん…
それは、あなたに捨てられた日に死んでしまった
偽りのクモの糸に囚われていたことに
気づくのが遅過ぎた

[Pre-Chorus]
傍にいてくれるのは、あなただと思っていた…

[Chorus]
結局、あなたがくれたもの…
それは、打ち砕かれた幾つもの夢
粉みじんの幻想だけ
できるものなら逃げ去りたい
この空っぽの心から

[Post-Chorus]
あなたは、私のためなら死んでも構わないと言った…

現実に目覚めると
未来はそれほど明るくないことに気づく
むしろ自ら不可能を夢見ていた
上手くゆくものと

[Pre-Chorus]
あなたは、私を裏切ったりしないと思っていた…

[Chorus]
[Post-Chorus]
You said you'd die for me...

[Chorus]
[Outro]



~ 概要 ~

カルヴィン・ヘイズ (key)は、アニマルズ/ハーマンズ・ハーミッツ/ドノヴァンほか多数のミュージシャンを手掛けたイギリスの音楽プロデューサーとして著名な父親のミッキー・モスト(Michael Peter Hayes)が設立したRAKレコードでタレント・スカウトに従事していた時、エンジニアの見習いとしてピンク・フロイド/バック・ミュージシャンとしてポリスやロビー・ネヴィルのレコーディングに参加するなどしていたマイク・ノシート(b)とスタジオで出合って意気投合、一緒に曲作りを行うようになります。
そして二人の活動にヴォーカリストが必要ということになり、声を掛けたのがRAKレコードとソロ契約を結んでいたクラーク・ダッチェラー(vo)でした。

3人はジョニー・ヘイツ・ジャズ(JHJ)を結成し1986年にシングル「Me and My Foolish Heart」でデビューするものの不発に終わり、クラークのソロ契約が切れると3人はRAKレコードを離れ、新たなレコード会社を模索します。
しかしそのバンド名に反し、彼らに幸運をもたらしたのはロンドンの有名ジャズ・クラブ【Ronnie Scott's Jazz Club】での演奏活動で、ここでのライブが認められヴァージン・レコードとの契約を獲得しました。


移籍後イギリスで最初にリリースされたのが1987年3月のシングル「シャタード・ドリームス」で、無名の彼らは徐々に人気が高まり同年5月に全英5位を記録、またカナダ/アイルランド/ノルウェー/スイス/西ドイツでもトップ10入りを果たしました。
続いて「反逆のヒーロー」がイギリスで同年8月に(全英11位)、アメリカでも同年10月にリリースされ31位と初めてヒットを記録、この曲がJHJにとってアメリカへの“挨拶代わり”となっています。

1988年に英米でこの2曲を含むJHJの1stアルバム『反ヒーロー宣言(Turn Back the Clock)』が発売されるとアメリカで「Shattered Dreams」の人気が高まり、Billboard Hot 100 で2位(1988年の年間26位)と大ヒットを記録しました。
作詞/作曲はヴォーカルのクラーク・ダッチェラーで、彼は実家にあるスタジオでアップライトピアノ、4トラックポータスタジオ、ドラムマシン、キーボードを使用して作曲しています。
“新人なのに実家にスタジオなんて何者?”と思うかもしれませんが、彼の父は1950年代のイギリスの人気ヴォーカル・グループ【The Stargazers】の歌手兼サックス奏者です。
普段は息子の音楽についてアドバイスを求められれば与える程度だった父が、この時ばかりは創作の時点で“お前は大ヒット曲を書いた”と本曲の可能性を信じてくれたため、その反応からクラークも何か特別なものを書いたと思ったといいます。

せっかく人気に火が付いたJHJでしたが、その矢先クラークがバンドを脱退してしまい(1988年)、彼は1990年のソロ・CD シングル「Crown of Thorns」の1曲として「Shattered Dreams」 (Acoustic Ver.)をセルフ・カバー、2007年のアルバム『Tomorrow』でもスローなバージョンを再録音しました。
2022年にはウクライナの戦争避難民に対し食料やシェルターを提供する『Poland Welcomes』を支援するためにチャリティー・シングルとして「Shattered Dreams Of Ukraine」をリリースしています。


 
 



~ Story ~

They died the day you let me go
それは、あなたに捨てられた日に死んでしまった
Caught up in a web of lies
偽りのクモの糸に囚われていたことに

主人公に何があったか、窺えるでしょう…
【your promises】とは恐らく[Pre-Chorus]に綴られていることで、それらが守られぬまま【They died】したことが。
歌だけで判断すると“男性が捨てられた歌”と想像すると思いますが、1987年の本曲のカラーPVではクラークが悲劇の主人公を演じているのに対し、翌年アメリカ向けにデヴィッド・フィンチャー監督が制作した全編モノクロPVの映像では“女性が捨てられた物語”となっています。

【web】は“クモの巣”で、網に掛かった獲物が呪縛され悶え苦しむさまはしばしば“恋愛”と重ねられ、ジャクソンズ「トーチャー」や槇原敬之「Hungry Spider」、いきものがかり「恋詩」ほか多くの作品で用いられています。
しかし冷静に考えてみると、実はそもそも恋愛そのものが相手を呪縛する概念なのであって、当人に“魔法”が効いているうちはそれを“天国”と認識し、切れた途端“地獄”に変わるだけなのでしょう。


And now you've given me
結局、あなたがくれたもの…
Given me nothing but shattered dreams, Shattered dreams
それは、打ち砕かれた幾つもの夢、粉みじんの幻想だけ

【shattered dreams】とは“打ち砕かれた夢”であり、【your promises】が守られず帰結した境地と想像します。
作者であるクラーク・ダッチェラーは本曲について“離婚を念頭に置いて書いた”と語り、次のように説明しています。

“ただ実際、人々はそれぞれ個人レベルや社会との関係の中で経験したある種の【shattered dreams】を結び付けているように思う。僕らは今、環境問題や経済問題、あるいは哲学的な問題など、非常に深刻な【shattered dreams】に直面している。僕は作曲に於いてシリアスなテーマをアップテンポな音楽という正反対の組み合わせで表現する傾向があり、「Shattered Dreams」は必ずしも希望に満ちた歌ではないけれど、曲のエネルギーは明るいので、困難な時を過ごしている人々に手を差し伸べ、感動を与える術があると思う(要約編集)”



~ Epilogue ~

最後は、ジョニー・ヘイツ・ジャズの本質を知る上で参考になる Billboard JAPAN の『JHJに影響を与えた楽曲』という記事からご紹介します。
挙げられた楽曲はクラーク・ダッチェラーがピックアップし自ら解説したもので、彼が何故「反逆のヒーロー」のような極めて政治的な作品を創作し、昨年もウクライナの戦争避難民を支援するために「Shattered Dreams Of Ukraine」をリリースしたのか理解できるでしょう。

それによると、クラークの“イマジネーションの扉を開けてくれた”のがビートルズであり、“ミュージシャンを目指した理由のひとつ”として挙げたのが「ひとりぼっちのあいつ」です。
彼は“自分が居場所のない「ひとりぼっちのあいつ」になってしまうことを恐れていた”と語っており、自分がそうならないこと、そして親しみ易いメロディーを添えることでそのメッセージを多くの人に届けることができると思ったのでしょうか…。

また彼は若い頃からアイズレー・ブラザーズの“ポップなメロディーとグルーヴでグローバルな社会問題を真剣に唱える方法”を学んだと言及しており、同様な楽曲としてスティーヴィー・ワンダーの「Higher Ground」やデヴィッド・ボウイ/パット・メセニー・グループ「This Is Not America」、ティアーズ・フォー・フィアーズ「Shout」などを挙げています。


そしてクラークが“80年代の作品の中で僕が一番大好きな曲”と挙げるのが坂本龍一/デヴィッド・シルヴィアンの「Forbidden Colours(禁じられた色彩)」です。

一方、“「Forbidden Colours」は悲しみがにじみ出ているけど、これ(This Is Not America)は僕にとって最も深いインスピレーション源の一つ。それもあって「Shattered Dreams」(打ち砕かれた夢)という曲名なんだ”と言及しており、これは私見ですが、「Forbidden Colours」の抒情性と「This Is Not America」のポップ性&メッセージ性を融合させると、確かに「Shattered Dreams」「反逆のヒーロー」のテイストになるように思えます。

 

そして、それぞれの「Shattered Dreams」に添えて…♪



Johnny Hates Jazz - Shattered Dreams (UK Version)

最後までお読みいただき、ありがとうございました ♪
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tags : 1987年 AC 別れの愛  名作MV デヴィッド・フィンチャー 

コメント

グループ名が面白です。
ウイキペディアを見ると、風変わりなバンド名はメンバーのマイク・ノシートの友人のジョニーがジャズ嫌いであったことから。
最近リック・アストリーの曲をユーチューブで聴いていたので、この曲が何か似ているように感じました。
リリースした年も同じ1987年。
すっと入ってきます。
洋画にハマっていた頃、シュワルツェネッガーのプレデターやトムクルーズのトップガン思い出します。

2023.02.18  さぶに  編集

さぶにさん

そうですね。
アルバムのライナーにも書いてあったし、ベストヒットUSAでも紹介されていました。
当時の記憶が湧き上がってこられたようですね、確かにリック・アストリーと同時期でした。
そしてプレデターとトップガンで、トップガンは昨年続編が公開され大ヒットしました。
昔の思い出もあり、現在進行形でもあると言えます。

2023.02.18  Beat Wolf  編集

こんにちは。

てっきり男が女にふられて・・・・と思って仲間が出来たと喜んでいたら、えっ・・・・MVを見ると女がふられた・・・・!?笑)

それにしてもごきげんなリズムで、どっちにしろ人の不幸をこんな風に歌って良いのか・・・・とやや呆気にとられました!?笑)

2023.02.18  忠      編集

忠さん

歌だけ聞けば男が女にふられてですが、映像では確かにそのようになっています。
そうですね、そのロジックに基づくと殺人を娯楽にしている小説やドラマはもっとけしからんです。(笑)

2023.02.19  Beat Wolf  編集

この曲を懐かしい~!こういう名前の方が歌っていたんですね。JAZZの名前から想像する音楽とは違い、典型的80年代音楽かも・・。ワムやティアーズ・フォー・フィアーズも彷彿させますね。

2023.02.22  ローリングウエスト  編集

ローリングウエストさん

わかりやすい3語で変わったバンド名なので一度聞いたら記憶に残るでしょう。
それぞれ持ち味は違いますが、それも含めて80年代音楽なのだと思います。
日本でもこれだけ知られていたのですから。

2023.02.22  Beat Wolf  編集

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