I Wish~洋楽歌詞和訳&解説

80年代の洋楽ロック・ポップス&ビートルズを中心に、歌詞の和訳と解説+エッセイでお届けします

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「イエスタデイ・ワンス・モア」カーペンターズ

2023.03.11

category : Carpenters

Carpenters - Yesterday Once More (1973年)

素敵な人との出会いが人生を豊かにするように、名曲は生涯あなたと素敵な泣き笑いを共にする

《解説記事を更新》いたしました。【続きはこちら>>】をクリックしてご閲覧ください。


~ Lyrics ~

Writer(s): Richard Carpenter, John Bettis /訳:Beat Wolf

幼い頃、大好きな曲を心待ちに
耳を傾けていたラジオ
お目当てが掛かると一緒に口ずさみ
笑顔にしてくれた

[Pre-Chorus 1]
あんなにも幸せだった時間
そんな昔でもないのに
どうして、何処へ行ってしまったのだろう…
でもそれは、再び戻ってきてくれる
まるで久しく会えなかった友人のように
心から愛した歌たちが

[Chorus 1]
Every "sha-la-la-la"
Every "whoa, whoa-oh"
そのどれもが、今もなお輝いている
Every "shing-a-ling-a-ling"
それは素敵に歌い始める
そして、彼が彼女の心を傷つける
あの場面に差し掛かると
本当に私を泣かせる
以前と同じように
昨日が甦ったかのように
(Shoobie-doo, lang, lang)

過ぎ去った歳月を振り返ると
あの楽しい時間が
今日という日を、むしろ悲しく感じさせる
あまりに多くが変わってしまったから

[Pre-Chorus 2]
私が口ずさんだ
愛の歌
言葉の一つひとつを心に刻み
あの懐かしいメロディーも
今なお心地よく響いている
歳月を溶かすかのように

[Chorus 2]
Every "sha-la-la-la"
Every "whoa, whoa-oh"
そのどれもが、今もなお輝いている
Every "shing-a-ling-a-ling"
それは素敵に歌い始める
すべての最高の思い出たちは
心の中ではっきり甦り
幾つかはなお私を泣かせる
以前と同じように
昨日が甦ったかのように
(Shoobie-doo, lang, lang)

[Outro]



~ 概要 ~

「イエスタデイ・ワンス・モア」はカーペンターズ1973年の5thアルバム『ナウ・アンド・ゼン(Now & Then)』からの2ndシングルで、 Billboard Hot 100 の2位(年間70位)、 Cash Box ではNo.1(年間43位)に輝いた楽曲です。
本曲は彼らの中で世界的に最もセールス的な成功を収めたシングルとされており、特に日本ではオリコン洋楽チャートで26週連続No.1、国内売り上げは公称100万枚以上(オリコンでは約60万枚)で当時の洋楽史上最高の売り上げを記録しました。
また、2007年に中国のラジオ番組『China Drive』がリスナーを対象にした【初めて聴いた英語の歌】の集計で50%以上が本曲を挙げているように、21世紀も言語の壁を越えて世界的によく知られている楽曲です。

作詞・作曲はリチャード・カーペンターとジョン・ベティスで、リチャードは日本のドキュメンタリー番組で本曲について“自分が書いた中で一番好きな曲”と言及、自身も1998年の『Pianist, Arranger, Composer, Conductor』や2022年の『Richard Carpenter's Piano Songbook』でピアノ・カバーを発表しています。
アルバム『Now & Then』はA面を【Now(現在)】として彼らの新曲を収め、B面は【Then(過去)】としてオールディーズのカバーをメドレーで編集するコンセプトがあり、その始まりと終わりをカーペンターズ・オリジナル曲で挟むというアイデアによって「Yesterday Once More」と「Yesterday Once More (Reprise)」が創作されました。

一方“天敵”ローリング・ストーン誌で【100 Greatest Singers of All Time 94位】に選出されるカレンの本曲でのヴォーカルは、まさに“歴史的”を抱かせる名唱です。
加えて本曲は“ドラマー”としての彼女の実力が発揮された作品としても知られており、レコーディング時に本曲のマスター音源となるテイクを録り終えた後、リチャードが“今のテイクの後半部分を残したまま前半だけを録り直したい”と無理難題(※)を言い出し関係者を困惑させたものの、カレンの刻む正確無比なリズムキープによって、繋いだ本人も“どこに繋ぎ目があるかわからない”と言うほど完璧に録り直すことができたそうです。
(※それを実現させるにはテープの接合箇所で不自然にならないよう録音済みの前半と、新録する後半のリズムを完全に一致させなければならない)

先述のように本曲の日本での人気は特に高く、1990年に三菱電機のCM曲として使用されました。
人気はセールスだけでなく日本人によるカバーにも表れていて、キャンディーズや晃(フィンガー5)・チェリッシュ から、内山田洋とクール・ファイブ、五木ひろし、八千草薫という意外な人まで本曲を取り上げ、カーペンターズのデビュー40周年の2009年には鬼束ちひろやBENI、MONKEY MAJIK、akiko、他14組がカーペンターズをカバーしたアルバム『イエスタデイ・ワンス・モア〜TRIBUTE TO THE CARPENTERS〜』を発表しています[「Yesterday Once More」はSong for Memories(鈴木康博・山本潤子・細坪基佳)がカバー]。

また、1980年ごろに一世を風靡したリチャード・クレイダーマンや、“ストリートピアノ”で有名なハラミちゃんピアノ・カバーも、私のお気に入りです。


 
 



~ Story ~

When I was young, I'd listen to the radio
幼い頃、大好きな曲を心待ちに
Waitin' for my favorite songs
耳を傾けていたラジオ

本曲が生まれたきっかけについてリチャードは、自身のウェブサイトで“70年代初頭オールディーズの人気が復活してカレンと僕はとても喜んでいた。このことを歌にして、アルバム『Now and Then』の第2面に収録する予定だったオールディーズ・メドレーを締めくくる作品にしたらいいんじゃないかと思ったんだ…”と、説明しています。
オールディーズ・メドレーにはカレンが初めて人前で歌った曲スキータ・デイヴィス1963年の「The End of the World」や、リチャードがリード・ヴォーカルを担当したビーチ・ボーイズ1964年の「Fun, Fun, Fun」など、二人が幼いころ聴いていた歌のカバーが選曲されました。

そんなリチャードは2005年にNHKで放送された『カーペンターズ~スーパースターの栄光と孤独~』で、“ラジオで初めて自分の曲を聴いた時ほど最高な気分はない。「遥かなる影」がヒットした時、ラジオのボタンを押すと1つの放送局から曲が流れ、別のボタンを押すとライバル局からも同時に聴こえてくる…たとえそれが最初で最後だったとしてもこの上ない体験だった”と、当時の心境を語っています。

 
The End Of The World · The Carpenters / Fun, Fun, Fun · The Carpenters


When they get to the part
そして、彼が彼女の心を傷つける
Where he's breaking her heart
あの場面に差し掛かると
It can really make me cry
本当に私を泣かせる

学生時代からカーペンター兄妹の友人で音楽パートナー/作詞者であるジョン・ベティスは『カーペンターズ~スーパースターの栄光と孤独~』で、“僕たちの作る歌は、多かれ少なかれその時々の自分たちを表した自伝的なものだった。良かったのは、カレンと私の感性が似ていたこと。何か起きた時の気持ちや反応が大体同じだったんだ…”と語っており、その一つとして1973年の「トップ・オブ・ザ・ワールド」を挙げました。
本曲で主人公を泣かせた歌に自伝的な背景が込められているかは不明ですが、ひょっとしたら彼らの間で共有するカレンのお気に入りの曲の一幕が投影されているのかもしれません。

そうでないとしても、洋の東西を問わず【メロドラマ】が好きな女性は多いでしょう。
悲しんだり、泣いたり、怒ったり…それを“当事者として実体験”することは誰にとっても苦痛ですが、歌やドラマの主人公に自分を重ねてドキドキ・ハラハラすることは現実の平凡な日常では機会の多くない“感情の発散/心の共鳴”であり、思いっきり泣いた後は心が軽くなって元気になるものです。
自身に“類似の実体験”があるなら、尚更…。


 



~ Epilogue ~

私が洋楽を聴き始めた1980年代、【オールディーズ】といえばポール・アンカやニール・セダカ、プラターズやレイ・チャールズ、コニー・フランシスやシルヴィ・ヴァルタン、エルヴィス・プレスリーやチャック・ベリー…といった1950年代後半~60年代のポップスやドゥーワップ、ロックンロールやロカビリー、ソウル/モータウンなど幅広い音楽が定義され、その多くを教えてくれたのがラジオでした。
楽曲的には難しいメッセージや“毒気”は含まれず、シンプルなラブ・ソングやハッピーで小躍りしたくなるテイストが多いイメージで、同じ年代でもビートルズやローリング・ストーンズは含まれません(日本ではビートルズ登場以前をオールディーズと定義することが多い)。

80年代に少年だった私にとって1960年は“20年も昔”であり、マイケル・ジャクソン「ビリー・ジーン」、ポリス「見つめていたい」、アイリーン・キャラ「フラッシュダンス…ホワット・ア・フィーリング」が年間Top3を飾った時代、オールディーズはまさに“古めかしい音楽”でした。

しかしカーペンターズが活躍した1970年代前半は、音楽の主流が既に過激なサウンドの【ハード・ロック】や実験的・革新的な創造を志向した【プログレッシブ・ロック】、強烈なメッセージ性を持った【プロテストソング】へと移行しており、オールディーズに通じる魅力をもつカーペンターズにとって当時は80年代以上にギャップのあった時代と言えるかもしれません。


Every "whoa, whoa-oh" still shines
そのどれもが、今もなお輝いている
(Only oldies, but goodies)
古いけれど、よいもの

ベン・E・キング 「スタンド・バイ・ミー」は1986年の同名映画に、ロイ・オービソン「オー・プリティ・ウーマン」は1990年の映画『プリティ・ウーマン』、ライチャス・ブラザース「アンチェインド・メロディ」は1990年の映画『ゴースト/ニューヨークの幻』、ザ・ロネッツ「ビー・マイ・ベイビー」は1987年の映画『ダーティ・ダンシング』、リトル・エヴァ「ロコモーション」はカイリー・ミノーグにカバーされるなど、オールディーズが後世に多大な影響を及ぼしたことは言うまでもないでしょう。

組織的・系統的に積み重ねられる『科学』は日進月歩で新しいものが優れていますが、個別に創作される『音楽』は必ずしも新しいものが優れているとは限りません。
むしろ優れた音楽は、優れた骨董品のように歳月を重ねるほど価値が増してゆくもの…
でもそれは、芸術だけに限りません。

きっと私たち自身が目指すべき境地こそ、“oldie but goodie”なのですから ♪



Carpenters - Yesterday Once More

最後までお読みいただき、ありがとうございました ♪
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tags : 1973年 AC 郷愁 ラジオ CM曲 美声  

コメント

70年代初頭の音楽主流はハード・ロック(ツェッペリン、パープル等)やプログレ(イエス、フロイド、クリムゾン等)の全盛期で、正当派過ぎる兄妹デュオは軟弱な音楽に見えて毛嫌いしていたコアなロック・ファンも結構多かったですね。美しいメロディの王道ポップスは悪く言えば優等生過ぎて時代遅れの感がありました。自分もハード・ロックやプログレにガッツリ嵌っていましたが、カーペンターズ曲は大好きで青春時代(洋楽聴き始め1970年から中高大、10年間)のBGMとして深く脳裏に刻まれています。今までカーペンターズ特集を2回やってきましたが、次回は小生も最大名作と評価の高い4th盤「ナウ・アンド・ゼン」からのチョイス、「イエスタデイ・ワンス・モア」「トップ・オブ・ザ・ワールド」「シング」「ジャンバラヤ」などを公開しようと思っております。

2023.03.12  ローリングウエスト  編集

ローリングウエストさん

どんな名曲も100%の人が好きな曲など存在しないし、ツェッペリンが今の時代に登場したとしても実際に得たような成功は得られないでしょう。
ラブ・ソングで売れた歌手が何十年と音楽を続け、それを軟弱とバカにした歌手が売れなくなって早々に音楽を辞めてしまった人もいます。
クイーンも当時相当バカにされましたが、結局は21世紀も愛されています。
どんなジャンルやテクニシャンでも、楽曲そのものが悪いと多くの人の心に響かないのだと思います。

2023.03.12  Beat Wolf  編集

こんにちは。

何度聴いても、何年聴いても飽きないですね。それでもいつかは歴史の底に沈んで行くのでしょうが、いずれまた再評価されるのでしょう。カレンの声を聴くだけで幸せな気分になります!

2023.03.14  忠      編集

忠さん

古い民謡やクラシック曲が今も継がれているように、このレベルの曲とカレンの歌声が無くなることはありません。
多くの並の曲は歴史の底に沈んでいくと思いますが…。

2023.03.14  Beat Wolf  編集

老若男女問わず

聴き手を選ばない、永遠の名曲。これを嫌いだ、苦手だという方っているのだろうか?このブログで久しぶりに聴きましたが、とても心地良い気分になりました。有難うございます。

2023.03.19  YOU NO IT NAME  編集

Re: 老若男女問わず

「誰でも佳さがわかる歌」を高く評価しても自分の優位性を示せないからと思います。
男らしさを示したいマッチョマンとか、空威張りの評論家とか?(笑)
大谷選手の凄さは子供でもわかるように、ホンモノは誰でもすぐわかります。

2023.03.19  Beat Wolf  編集

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