I Wish~洋楽歌詞和訳&解説

80年代の洋楽ロック・ポップス&ビートルズを中心に、歌詞の和訳と解説+エッセイでお届けします

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「雨に打たれて」ティナ・ターナー

2023.06.06

category : Tina Turner

Tina Turner - I Can't Stand The Rain (1984年)

切ないのは雨のせい?ジョン・レノンも“史上最高”と絶賛した名曲をロックンロールの女王が歌唱

《解説記事を更新》いたしました。【続きはこちら>>】をクリックしてご閲覧ください。


~ Lyrics ~

Writer(s): Ann Peebles, Don Bryant & Bernard "Bernie" Miller /訳:Beat Wolf

[Chorus]
窓を叩く雨が心を逆撫でし
甘い思い出たちを呼び覚ます
窓を叩く雨が心を苛む
あの人はもうここにいない

窓ガラスさん、覚えてる?
あの頃どんなに楽しかったか
二人が一緒なら
何もかもが華やかだった
今は離ればなれ
耐え難い音だけが残される

[Chorus]

二人が一緒だった頃
何もかもが華やかだった
今は離ればなれ
耐え難い音だけが残される

I can't stand the rain...

[Chorus]

二人が一緒だった頃
何もかもが華やかだった
あなたは幾つかの甘い思い出を手に入れ
私には、耐え難い音だけが残される

[Chorus]
窓を叩く雨が心を逆撫でし
甘い思い出たちを呼び覚ます
窓を叩く雨が耐えられない
亡霊のように憑りつき、今も心を苛む

Hey, hey, rain...
どうかこの窓に近づかないで
あの人はもうここにいない
どうかこの窓を叩かないで
甘い思い出は、もう耐えられない



~ 概要 ~

「雨に打たれて」は、アメリカのソウル/ロック歌手ティナ・ターナーが1984年5月に発表した5thソロ・アルバム『プライヴェート・ダンサー(Private Dancer)』の収録曲です。
本国でシングル・カットは無く翌85年にヨーロッパで発売されイギリス57位、オーストリア6位(年間30位)、西ドイツ9位ほか複数の国でヒットしました。

本曲はティナが最初の歌手ではなく、1973年7月にソウル歌手アン・ピーブルス(Ann Peebles)が歌唱したバージョンがオリジナルで、同年に Billboard Hot 100 で38位/ Best Selling Soul Singles で6位を記録しました。
アンとそのパートナー(後の夫)ドン・ブライアント、DJのバーナード・"バーニー"・ミラーによって書かれた作品で(詳細後述)、ジョン・レノンが“the best song ever”と絶賛、ローリング・ストーン誌も【The 500 Greatest Songs of All Time 197位】(2004年)と位置づけるなど、歴史的に高く評価されています。

“雨をテーマ”とする本曲のアン・ピーブルス ver.では、“雨音”を表現するために新たな創意が試みられました。
当時ポップスでは雨音をバイオリンのピチカート(爪弾き)で表現するのが一般的でしたが、まだ真新しい楽器であったエレクトリック・ティンバレスを使用し独特な“ポコポコ”した響きをもたらしています。
一方ティナ ver.では電子マリンバかシンセサイザーと思われる“コロコロ”したサウンドが採用されており、両者の歌唱を含め表現の違いを比べてみるのも一興でしょう。

またオリジナル以上にチャートで成功したのはイギリスを拠点とするアメリカのR&Bユニットのエラプション(Eruption / 1978年) ver.で、 当時流行のディスコ/ファンク路線のサウンドを彩り Billboard Hot 100 の18位ほかイギリス5位、ベルギーとオーストラリア1位/ノルウェーとスウェーデン2位/イタリア3位/フランス5位/西ドイツ7位など世界的大ヒットとなりました。
それに次ぐ成功を収めたのが、1997年にアン・ピーブルス ver.をサンプリングしたシングル「The Rain(Supa Dupa Fly)」によりデビューを果たした女性ラッパーのミッシー・エリオットで、 Billboard Dance Singles Sales 3位/イギリス16位/オランダ27位など国際的にヒットに止まらず、アン・ピーブルス ver.に続き2021年にローリング・ストーン誌【The 500 Greatest Songs of All Time 453位】にランク入りしています。


 
 



~ Story ~

I can't stand the rain
この雨には耐えられない

それは、アン・ピーブルズが実際に発した言葉がきっかけでした…
1973年のある夜、彼女と本曲の作者となる後の夫ドン・ブライアントとラジオ放送作家のバーナード・バーニー・ミラーがメンフィスでブルースのライブに出掛けようとしていたとき土砂降りとなり、彼女の発したのが上のフレーズだったそうです。
ところが常に新しい素材を必要としているプロのソングライターであるドン・ブライアントがこの言葉にインスピレーションを覚え、ライブに行く予定も忘れピアノの前に座り他の2人と共にテーマに沿ったリフを作り始め、当夜のうちに完成させたのが「I Can't Stand The Rain」でした。


I can't stand the rain against my window
窓を叩く雨が心を逆撫でし
Bringing back sweet memories
甘い思い出たちを呼び覚ます

1970年代初頭、当時のリズム&ブルースはザ・ドラマティックスの「In the Rain」やラヴ・アンリミテッドの「Walkin' in the Rain with the One I Love」など、雨を歓迎するような内容の歌がヒットチャートをにぎわせていました。
ところがドン・ブライアントはむしろ流行に反するよい言葉だと考え、雨を歓迎しない「I Can't Stand The Rain」をテーマに掲げたといいます。
ただ歌詞を鑑みてわかるとおり、彼女の苦しみは雨がもたらしたものではなく、寧ろ“雨と共有した甘い想い出”が沢山あるからこそ、“空っぽになった部屋”の窓を叩く雨音が耐え難いのです。

どんなに時代が変わり流行が移ろっても、人間に宿命づけられたその“性(さが)”は今後も変わり得ないでしょう。


When we were together, Everything was so grand
二人が一緒だった頃、何もかもが華やかだった
Woah, empty pillow where his head used to lay
あの人という主を失った枕

実はティナ ver.(上)とアン ver.(下)では、2番の歌詞が異なっています。
アン ver.では現在も元カレの枕をベッドに置き続けるほどの強い未練が生々しく描かれているのに対し、ティナは敢えてこの部分を削除したことになりますが…。


Ann Peebles - I can't stand the Rain 1974




~ Epilogue ~

既に報じられているように去る5月24日、ティナ・ターナーが83歳で亡くなりました。
彼女ほどパワフルな女性歌手を思い当たらないほど卓越した存在でまさに“Queen of Rock and Roll”でしたが、晩年は脳卒中や癌、腎不全で移植を受けるなど様々な健康問題を抱えていたそうです。
ビートルズやローリング・ストーンズがデビューする前からアイク&ティナ・ターナーとして頭角を現し、ミック・ジャガーは“僕が若かったころ、彼女は僕をとても助けてくれた。僕は彼女のことを決して忘れない”と追悼しています。


Ike and Tina Turner - A Fool in Love


ロックは“波風”こそ浮沈を導く“諸刃の世界”ですが、その“女王”の人生もまさに波乱万丈でした。
それを象徴する楽曲こそ1984年の「愛の魔力」であり、彼女がようやく自分の脚で歩き始めた人生の転換点でもありました。

彼女は1993年に自伝映画『ティナ(What's Love Got to Do with It )』を公開、そのテーマとして新たに「I Don't Wanna Fight」をレコーディングしています。
長年闘い続けてきたティナが辿り着いた結論こそ“I Don't Wanna Fight(no more)”であり、嵐が過ぎ去った後の陽だまりのようなテイストは私の大のお気に入りです。
そしてティナが多くの歳月を費やし辿り着いた境地は彼女一個の歌曲と人生に止まらずこれからも、すべての人の、あらゆる問題を解決するヒントとなり得るでしょう。

R.I.P. “Queen of Rock and Roll”


Tina Turner - I Can't Stand The Rain (Live from Rio de Janeiro)

最後までお読みいただき、ありがとうございました ♪
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tags : 1984年 ソウル ニューウェイヴ せつない愛 雨/虹 偉大な曲 偉大な歌手  

コメント

ティナ・ターナーは数年前からいつか公開しなきゃと思いつつずっと未公開だったのですが昨年10月に漸く記事をまとめることができたのでホッとしていたところです。まだまだ元気だと称賛していたのに、その数か月後に訃報を聞くとは・・・、虫が知らせていたのかもしれません。自分は70年に夫アイクと夫婦で歌っていた頃のワイルドなティナが今も脳裏に強烈な思い出として刻まれています。

2023.06.10  ローリングウエスト  編集

ローリングウエストさん

彼女こそ自伝映画の主人公になるべきロックな人生であり、その手の映画がブームとなるはるか以前に映画を発表しました。
私もアイク&ティナ時代の曲も一瞬考えましたが、彼女は彼のことを忘れたいと思っていたと想像し季節も勘案し本曲にしました。
何れにしても、彼女には魅力的な歌がまだたくさんありますから…。

2023.06.10  Beat Wolf  編集

こんにちは。

この人のことも名前しか聞いたことがありません。日本の新聞でも訃報が載ったくらいですから有名だったのでしょう。

それにしても洋の東西を問わず、雨の歌は名曲が多いですね。

2023.06.12  忠      編集

忠さん

そんなもんです。私だって今の日本の歌全く知りませんから。
今の時代に寅さんみたいな人がいないように、彼女のような歌手もいないと思います。
こういうはみ出した人たちがいるからこそ世の中は面白いものですが…。

2023.06.12  Beat Wolf  編集

また一人、鬼界に入りましたね!

こんにちは。
お久しぶりです。
このところ、毎年数名の一世を風靡したアーティストを見送っていますね。寂しくなります。

去年はオリビア・ニュートン・ジョン。
DVDの中で、彼女は永遠に私のマドンナです☆

私自身としては、映画マッドマックスの主題歌を歌ったのが一番印象に残っていますね。

合掌・・・。

PS.先日 KANSAS の記事を書きました。
どうぞ、ご笑覧くださいませ。

2023.06.20  トリトン  編集

Re: また一人、鬼界に入りましたね!

そうですね。
こればかりは宿命なので仕方ないですが、オリビアは若過ぎました。
せめてもの救いは、DVDの中で彼女は永遠のマドンナとしてずっと輝いていることですね。
マッドマックスのティナも。(笑)

2023.06.20  Beat Wolf  編集

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