「ゴールド」は当時、雄記号【♂】と雌記号【♀】を融合させた独自のシンボル(※)を自らの名として掲げていたプリンス1995年9月の17thアルバム『ザ・ゴールド・エクスペリエンス(The Gold Experience)』の収録曲です。 (本人がシンボルの呼称を示さなかったため、巷では【Symbol】や【ラブ・シンボル】【the Artist Formerly Known As Prince(かつてプリンスと呼ばれたアーティスト)】【元プリンス】などと呼ばれていた) 同年11月にアルバムからの3rdシングルとしてリリースされ、アメリカでは Billboard Hot 100 の 88 位、イギリスでは10位を記録しました。
シングルB面の「Rock 'n' Roll Is Alive (And It Lives in Minneapolis)」はレニー・クラヴィッツの「Rock and Roll Is Dead」へのアンサー・ソングで、これがB面には勿体無いくらい楽しいファンク・ロックです。 プリンスというと“ミネアポリスが生んだ最も有名な音楽の継承者”と称されるほど地元で親しまれた存在ですが、発表から24年後の2019年にミネアポリスを拠点とするNBAチーム、ミネソタ・ティンバーウルブズの試合で観客全員に本曲の限定7インチ・アナログ盤が配られ、アルバム『パープル・レイン』のフォントを真似た文字がプリントされた紫を基調とするユニフォームを選手たちが身に着け、ハーフタイム・ショウでもシーラ・Eやリヴ・ワーフィールド、モリス・デイといったアーティストがパフォーマンスする催しが行われました。
「Gold」はプリンスによる自作/自演およびセルフ・プロデュース作品で、アルバムのリリース前に記者団へ【next“Purple Rain”】と表すほど本曲を自賛したといわれます。 そしてプリンスに対する私の評価と合致するのが、音楽とチャートの問題の権威と言われるイギリスの音楽評論家 James Masterton で、彼は本曲について“彼はレコードで勝手気ままだが、袖からエースを引っ張り出したいときは独特のやり方でそうする。「Gold」はほぼ間違いなく、プリンスの名盤として語り継がれる運命にある”と評しました。 日本では、格闘技イベント『K-1』 WORLD GPシリーズのテレビ中継エンディング曲としてご記憶の方もあるでしょう。
PVもプリンス自身が監督を務めた映像であり、シングルB面の「Rock 'n' Roll Is Alive (And It Lives in Minneapolis)」と一連の流れで制作したものと思われます。 映像でまず衆目を引くのは、彼が演奏している“ゴールドのギター”でしょう。 これは上記のように、当時彼が自身の名として表したシンボルをドイツ人のギター職人に制作させたもので、【シンボルギター(The Symbol Guitar)】と呼ばれており、ゴールド以外にも黒・白・紫があるそうです。
元々は1175年にフランスの修道士アラン・ド・リールが書いた【Do not hold everything gold that shines like gold】に起源する古い概念で、現代も広く知られる上のフレーズはウィリアム・シェイクスピアが1590年代に書いた戯曲『ヴェニスの商人』(The Merchant of Venice)第2幕第7場に描かれた言葉です。 物語に登場する莫大な財産を相続した美貌の貴婦人ポーシャとの結婚条件は“金・銀・鉛の小箱から正しい箱を選んだ者”であり、求婚者の一人モロッコ公が選んだのが金の小箱でした。 小箱を開けると入っていたのは髑髏(しゃれこうべ;つまり“ハズレ”)で、巻紙には次のように書かれていました。
コメントを投稿