I Wish~洋楽歌詞和訳&解説

80年代の洋楽ロック・ポップス&ビートルズを中心に、歌詞の和訳と解説+エッセイでお届けします

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「ゴールド」プリンス

2023.09.14

category : Prince

Prince - Gold (1995年)

「Sign O' The Times」と対極の傑作。王子の本質がよく表れた歌詞、超絶ギター・ソロも必聴 ♪

《解説記事を更新》いたしました。【続きはこちら>>】をクリックしてご閲覧ください。


~ Lyrics ~

Writer(s): Prince /訳:Beat Wolf

聳(そび)える山は
飛ばない限り頂(いただき)に見(まみ)えない
多寡の知れた地表のモグラ塚は
うろつく行き場も無い

[Chorus]
誰もが、既に売れたものを売りたがり
誰もが、既に語られた事を語りたがる
型を破る意志がないなら、お金に何の価値がある?
炎の真ん中だって温度は低い
煌びやかなものすべてが、黄金とは限らない

絶望の海があり
そこに暮らし続ける人々
来る日も来る日も、不幸を生きている
でも地獄は一過性ではない、あなたは彼らにどんな言葉を?

[Chorus]

99歳の女性
善良な人生を送ったなら、天はその魂を召す
それは一つの説、興味がないなら
そこへ行くことを望む人々のため、わきへ寄って道を空けよう

[Chorus 2]
誰もが、既に売れたものを売りたがり
誰もが、既に語られた事を語りたがる
年を取らないなら、若さに何の価値がある?
炎の真ん中だって温度は低い
煌びやかなものすべてが、黄金とは限らない

[Outro]
[Spoken: Rain Ivnana]




~ 概要 ~

「ゴールド」は当時、雄記号【♂】と雌記号【♀】を融合させた独自のシンボル(※)を自らの名として掲げていたプリンス1995年9月の17thアルバム『ザ・ゴールド・エクスペリエンス(The Gold Experience)』の収録曲です。
本人がシンボルの呼称を示さなかったため、巷では【Symbol】や【ラブ・シンボル】【the Artist Formerly Known As Prince(かつてプリンスと呼ばれたアーティスト)】【元プリンス】などと呼ばれていた)
同年11月にアルバムからの3rdシングルとしてリリースされ、アメリカでは Billboard Hot 100 の 88 位、イギリスでは10位を記録しました。

シングルB面の「Rock 'n' Roll Is Alive (And It Lives in Minneapolis)」はレニー・クラヴィッツの「Rock and Roll Is Dead」へのアンサー・ソングで、これがB面には勿体無いくらい楽しいファンク・ロックです。
プリンスというと“ミネアポリスが生んだ最も有名な音楽の継承者”と称されるほど地元で親しまれた存在ですが、発表から24年後の2019年にミネアポリスを拠点とするNBAチーム、ミネソタ・ティンバーウルブズの試合で観客全員に本曲の限定7インチ・アナログ盤が配られ、アルバム『パープル・レイン』のフォントを真似た文字がプリントされた紫を基調とするユニフォームを選手たちが身に着け、ハーフタイム・ショウでもシーラ・Eやリヴ・ワーフィールド、モリス・デイといったアーティストがパフォーマンスする催しが行われました。

「Gold」はプリンスによる自作/自演およびセルフ・プロデュース作品で、アルバムのリリース前に記者団へ【next“Purple Rain”】と表すほど本曲を自賛したといわれます。
そしてプリンスに対する私の評価と合致するのが、音楽とチャートの問題の権威と言われるイギリスの音楽評論家 James Masterton で、彼は本曲について“彼はレコードで勝手気ままだが、袖からエースを引っ張り出したいときは独特のやり方でそうする。「Gold」はほぼ間違いなく、プリンスの名盤として語り継がれる運命にある”と評しました。
日本では、格闘技イベント『K-1』 WORLD GPシリーズのテレビ中継エンディング曲としてご記憶の方もあるでしょう。


PVもプリンス自身が監督を務めた映像であり、シングルB面の「Rock 'n' Roll Is Alive (And It Lives in Minneapolis)」と一連の流れで制作したものと思われます。
映像でまず衆目を引くのは、彼が演奏している“ゴールドのギター”でしょう。
これは上記のように、当時彼が自身の名として表したシンボルをドイツ人のギター職人に制作させたもので、【シンボルギター(The Symbol Guitar)】と呼ばれており、ゴールド以外にも黒・白・紫があるそうです。

また映像を見ると、プリンスの頬に何やら文字が書かれていることにお気づきの方もあるでしょう。
文字列を並べてみるとそれは【SLAVE】、つまり“奴隷”ですが…。




Prince - Rock And Roll Is Alive! (and It Lives In Minneapolis)



~ Story ~

Everybody wants to sell what's already been sold
誰もが、既に売れたものを売りたがり
Everybody wants to tell what's already been told
誰もが、既に語られた事を語りたがる

サビの最初2行は、格言めいています。
その真意を日本風に言い換えるなら、千利休の句に由来とも言われる【人の行く裏に道あり花の山、いずれを行くも散らぬ間に行け】でしょうか…。

“流行に乗っていれば安心”というのが大衆心理ですが、それを創り出すことが仕事のクリエイター(創作者)が大衆と同じレベルに安住していては務まりません。
また【流行】は“流れ行くもの”であって、70年代前半に隆盛を誇ったハード・ロック/プログレッシブ・ロックが70年代後半に“オールド・ウェイヴ/ダイナソー・ロック(恐竜のように大仰で化石化したロック)”と揶揄され、急速に衰退したことをご記憶の方もあるでしょう。

日進月歩の科学の常識も、また然り…。


What's the use of money if you ain't gonna break the mold?
型を破る意志がないなら、お金に何の価値がある?

これこそ“プリンスの真髄”であり、“アーティストの究極的存在価値”でしょう。
私の中で【ミュージシャン】は“他人を喜ばせるために創作・演奏”する職業、【アーティスト】は“自分を喜ばせるために創作・演奏”する人であり、ある意味本質は真逆といえます。
自分や社会の既存概念を打ち破ること自体容易な作業でありませんが、多くのリスナーにとっては楽曲の“革新性”より“好感”が重要であり、この2つを共存させる無理難題を長年に亘り成し遂げた稀有な一人こそプリンスです。

当時プリンスが自らの名前とアルバム・タイトルに呼称のないシンボルを掲げたのは所属レコード会社であるワーナー・ブラザースとの対立が原因であり、彼は次のように説明しています。
“ワーナーから解放されるのが究極の目標で、その最初の一歩が、プリンスという名前をシンボルに変えることだった。プリンスというのは、生まれた時に母からもらった名前だけど、ワーナーはその名前を商標登録し、僕が作曲した全ての音楽をプロモーションするために使ったんだ。ワーナーは、プリンスという名前と、プリンスという名前で発売される全ての音楽を所有している。僕は、ワーナーに金を作り出すために使われる人質になったのさ…”

この話により、プリンスが自らの頬に【SLAVE(奴隷)】と書いた理由を説明する必要はないでしょう。
ただ問題はプリンスの側にも多分にあると想像され、1993年に彼がワーナーと再契約を交わした内容【アルバム6枚/契約金1億ドル(当時音楽史上最高額)+アルバム発表ごとに200万ドルの報酬金】という破格でした。
プリンスは亡くなる2016年までに39枚のオリジナル・アルバムを発表しただけでなく、遺された未発表曲もアルバム換算で100枚分あると言われるほどの多作家で、その創作意欲・能力は他のスーパースターの水準を遥かに超越していますが、彼のアルバムがあまりに市場へ溢れてその神秘性を失い、飽きられ売れなくなるより楽曲を精査して契約枚数で最大の利益を得たいレコード会社の立場も理解できます(アルバム一作当たり150万枚売らないと契約金の元さえ取れない?)。


Prince - Gold (Gold Experience Tour live in Wembley, 1995)




~ Epilogue ~

All that glitters ain't gold
煌びやかなものすべてが、黄金とは限らない

【gold(金:きん)】は地球上で採掘可能な埋蔵量が一辺 20 mの立方体に収まる程度しかない希少な金属であり、そこから“価値あるもの、貴重な[美しい]もの”といった意味合いにも用いられます。
プリンスらしい言葉ですがこのフレーズは彼のオリジナルではなく、レッド・ツェッペリン「天国への階段」の冒頭の歌詞ほか多くの創作に引用された格言なので、覚えのある方も多いでしょう。

元々は1175年にフランスの修道士アラン・ド・リールが書いた【Do not hold everything gold that shines like gold】に起源する古い概念で、現代も広く知られる上のフレーズはウィリアム・シェイクスピアが1590年代に書いた戯曲『ヴェニスの商人』(The Merchant of Venice)第2幕第7場に描かれた言葉です。
物語に登場する莫大な財産を相続した美貌の貴婦人ポーシャとの結婚条件は“金・銀・鉛の小箱から正しい箱を選んだ者”であり、求婚者の一人モロッコ公が選んだのが金の小箱でした。
小箱を開けると入っていたのは髑髏(しゃれこうべ;つまり“ハズレ”)で、巻紙には次のように書かれていました。

輝くもの必ずしも金にあらざるなり、
このことば汝もしばし耳にせしはずなり、
目くるめくわが面に心ひかるるあまり、
そのいのち売るにいたりしものあまたあり、
金色に輝く墓もその下には蛆(うじ)虫住めるなり…



あなたはミミズやヤスデ、ワラジムシや蛆虫について、どのようなイメージを抱いておられるでしょうか…
これら土壌動物や微生物は、動植物の遺体・排泄物を分解・浄化、また土壌耕作(かく拌)によって肥沃化する…生態系、つまりあらゆる生命体の存続に不可欠な存在であるにも拘らず、チョウやカブトムシのように人々から尊重されず、忌み嫌われています。
このギャップは、私たち人間がどれだけ物事の本質に基づかず表面的な“煌びやかさ”で価値判断しているかを端的に指し示す事例として、本項に挙げました。

この構図を人間社会に投影してみると、日々の活動から出されるゴミや下水を処理・浄化する職業や食料を生産する第一次産業など、私たちが“生きてゆく上で不可欠”な職業が尊重されず、“効率的にカネ儲け”できたり“先生”と称される“煌びやかな職業”ばかりに尊重が偏っていることに気づくでしょう。
空気や水が容易に得られるからといって、安全な空気と水の存在価値が私たちの生存に最重要であることは宿命的に変わり得ません。

上水道の整備業務 厚労省から国交省に移管 水道管理を一元化へ

今年5月に報じられた何気ないニュースですが、国民にとって“極めて重大な変革”です。
私はこれを、『上水道の概念』をこれまでの“健康的に安全な水”から、“土木事業の一つ(飲食を前提としない水)”へと変質させ、政府与党と“癒着”する外国資本を含む民間企業に水道事業の長期間運営権を譲渡するコンセッション方式を推進するための法改定、と理解しました。
詳細は別の機会に譲りますが、上下水道や橋梁などあらゆる“基盤インフラの老朽化”が顕在する21世紀の日本に於いて、自公政権および大阪維新は五輪や万博・リニア・カジノなど“煌びやかで不要不急の事業”に巨額を浪費する一方で、国民が“健康で文化的な最低限度の生活を営むために不可欠な水道事業”を他者に売り渡す所業は、憲法25条に基づく行政の責務に違反します。

All that glitters ain't gold
煌びやかなものすべてが、黄金とは限らない

本当に大切なものは、一度失うと二度と取り戻すことはできません。
失ってからそれに気づいても、遅いのです…。


Prince - Gold (Live) (Gold Experience Tour, Brussels, 1995)

最後までお読みいただき、ありがとうございました ♪
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tags : 1995年 ロック/ポップ ファンク 偉大な歌手 ギター スポーツ  

コメント

プリンスはまだ一度も特集記事を公開していないんですよ。死後1周年の時期に記事を書こうと思って名曲のユーチューブを集めたのですが、ことごとくミュート制限や著作権制限などかかっており往生しました。結局、記事を書くのは諦めたのですが、今はそんな規制はなくなっているので今年こそトライしてみようと思っています。

2023.09.18  ローリングウエスト  編集

こんにちは。

シンプルですが味わい深い詞ですね。メロディーも自然で預言者の語り口のようです。
ギターソロも”one two ,one two tree four”の後のギュイ~ンで聴衆の耳を釘付けにしてしまいます。

2023.09.18  忠      編集

ローリングウエストさん

そうですか、プリンスはyoutubeに否定的だったので許可しませんでしたが、死後公式動画が公開されました。
彼は唯我独尊なだけに、研究対象としては最大級の面白みがあると思うので是非トライしてみてください。

2023.09.19  Beat Wolf  編集

忠さん

この曲は彼の中でも例外的に聴きやすく万人向きです。
彼もやはり人間的成長に伴い、個人のことから社会への関心が移って晩年は宗教へも向かいました。
普段は彼の個性が印象付けられますが、実はめちゃくちゃギターが上手いです。

2023.09.19  Beat Wolf  編集

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