I Wish~洋楽歌詞和訳&解説

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「メイキング・ラヴ」ロバータ・フラック

2023.11.07

category : Roberta Flack

Roberta Flack - Making Love (1982年)

紆余曲折を窺わせる“二人三脚”の人生を、まろやかなロバータの歌声と旋律がやさしく包み込む ♪

《解説記事を更新》いたしました。【続きはこちら>>】をクリックしてご閲覧ください。


~ Lyrics ~

Writer(s): Burt Bacharach, Bruce Roberts, Carole Bayer Sager /訳:Beat Wolf

Here
二人はここで心を寄せ
また触れ合い、愛し合う
二つの心は決して繕えないと思えた頃を覚えてる?
でも互いがあってこそ、二人はよりよくなる
今ならわかる…
愛には、肌を触れ合う以上の意味があることを

Here
もう狼狽(うろた)えたりしない
互いの人生を見つめ、それぞれの人生を生きる
二人は決して生き残れないと思えた頃を覚えてる?
それでも、今も二人の心の絆は断たれていない
私は知っている…
愛には、肌を触れ合う以上の意味があることを

[Bridge]
決して変わらないもの
時々、変わってしまうもの

[Outro]
今の私には、あなたを受け止めるだけの強さがある
そして、二人の心の絆は断たれていない
愛には、肌を触れ合う以上の意味があることも知っている
私はあなたと、その温もりを忘れない
あなたを忘れない
And I remember you, ooh...



~ 概要 ~

「メイキング・ラヴ」は1982年にリリースされたロバータ・フラックの10thアルバム『アイム・ザ・ワン(I'm the One)』からの1stシングルで、Billboard Hot 100 で13位(年間46位)を記録しました。
ロバータの全米No.1曲に「Feel Like Makin' Love」があるが、本曲はこれと別の楽曲)

作者は同年4月に結婚したバート・バカラックとキャロル・ベイヤー・セイガー夫妻、そしてブルース・ロバーツです。
バート・バカラックは作詞家のハル・デヴィッドとのコンビで「雨にぬれても」(B. J. トーマス/1969年)や「遙かなる影」(カーペンターズ/1970年)、バートとキャロル・ベイヤー・セイガーの共作で「愛のハーモニー」(ディオンヌ&フレンズ/1985年)や「ニューヨーク・シティ・セレナーデ」(クリストファー・クロス/1981年)、そしてブルース・ロバーツはキャロルがソロ・アルバムを発表していた頃からの作曲パートナーでした(ブルースの著名な作品にはバーブラ・ストライサンド&ドナ・サマー「ノー・モア・ティアーズ(イナフ・イズ・イナフ)」)。

バート・バカラックは1960年代後半から、スターダムを手に入れる以前のロバータの歌を聴くためにキャピトル・ヒルのクラブ『Mr Henry's』を定期的に訪れるなど古くから彼女を知っていましたが、ロバータが彼の楽曲をレコーディングしたのは「Making Love」が初めてでした。
本曲は1982年公開の映画『メーキング・ラブ(Making Love)』の主題歌として創作された作品であり、楽曲を聴けば何故その歌い手としてロバータが選ばれたか理解できるでしょう。
期待に反し映画は興行的に失敗したものの、ロバータが歌った「Making Love」はPVも制作されない中で孤軍奮闘によりヒットを遂げ、楽曲は【ゴールデングローブ主題歌賞】(Best Original SONG - Motion Picture)にノミネートされています。

「Making Love」シングルB面のジャニス・イアン作曲「我が心のジェシ(Jesse)」は1973年のアルバム『やさしく歌って』の収録曲ですが、「Making Love」に劣らぬ佳曲なのでご紹介しましょう。
また本アルバムから、2ndシングルとなったタイトル曲「I'm the One」もお楽しみください。


 




~ Story ~

Remember when we thought our hearts would never mend?
二つの心は決して繕えないと思えた頃を覚えてる?
Remember when we thought we never would survive?
二人は決して生き残れないと思えた頃を覚えてる?

1番と2番の同じフレーズを並べました…
まろやかなロバータの歌声とやさしい旋律に包み込まれると幸福感を抱かれるかもしれませんが、歌詞に触れると二人の関係は必ずしも幸福ではなかったことに気づくでしょう。
長年連れ添った夫婦であれば一つや二つの危機はあって不思議でありませんが、【決して繕えない】や【決して生き残れない】はかなり深刻です。


There's more to love,
私は知っている…
I know, than making love
愛には、肌を触れ合う以上の意味があることを

ここでは【love】と【making love】を比較していることから、この二つの“愛”は同一の意味ではないと理解できるでしょう。
【love】は恋愛に限らず家族や友人・祖国などに対する愛情、物・事に対する愛好など対象が限りなく広いですが、【making love】は“ほぼ一つ”に絞られます(画像検索すると一目で二つの違いがわかる)。

【making love】は【love】のごく限られた一部ですが、“生殖”によってこそ生命は誕生し得るという意味で最重要の愛です。
一方で多様な感情・知性と社会性、及び長い寿命を持つ現代人は上記のように多様な愛に満足/不満を感受するため、日常的にはより広義の【love】が満たされることの方が重要かもしれません。


Here, close to our feelings
二人はここで心を寄せ
We touch again, we love again
また触れ合い、愛し合う

…上記を踏まえた上で最初の歌詞を振り返ると、本作品の核心が見えてくるでしょう。
ここで【close to(接近)】するのは【our feelings(私たちの気持ち)】であり、その状態で【touch/love】するとなると、続く【肌を触れ合う以上の意味】に繋がります。

歌詞全体を通してみても“二人は物理的に傍にいない(離別)”ことが推察され、それでも尚…という物語が想像されるでしょう。
そんな切ない主人公を、ロバータの歌声と旋律がやさしく見守り励ましているように思えてなりません。


Roberta Flack, Making Love - Tarek Refaat, Piano




~ Epilogue ~

最後に、本曲が主題歌となった映画『メーキング・ラブ』のストーリーについて触れておきましょう。

それぞれ医師とTV局プロデューサーとして成功を収め、大きな邸宅に住み人も羨む生活を送っていた結婚8年目の夫婦ですが、密かに妻との性的不一致に不満を抱いていた夫はゲイに目覚め他の男性との肉体関係に及んでしまいます。
夫にそれを告白された妻は“裏切り”と激怒するも後日これを許しやり直しを提案、しかし夫は“君をとても愛しているが、セックスのない生活で君を苦しめたくない。それぞれ幸せを求めて別れた方がよい”と譲らず、二人は離婚を選択せざるを得ませんでした。
数年後それぞれパートナーと新しい関係を築いた二人は共通の知人の葬儀で再会、二人はそれぞれ別の道を歩むことになったお互いの新たな人生を心から祝福しあう…という物語です。


人権意識の発達した現代に於いても同性愛に対しては賛否の分かれる分野ですが、本映画は約40年前に“同性愛を寛容で同情的な観点から扱った最初のハリウッド主流映画の一つ”とされ、実際、夫のザック役としてオファーしたマイケル・ダグラスやトム・ベレンジャー、ハリソン・フォード、ウィリアム・ハートらに出演を断られたといいます。
一方、物議を醸す可能性のある映画のテーマ曲を歌うことについてロバータ・フラックは、“愛についての歌を歌うことを決して恐れることはなかった…愛は音楽と同じように普遍的だもの”と語っているそうです。


こうした映画の背景を鑑みると、本曲に内包されている心情がより深く理解できるでしょう。
恐らく「Making Love」は映画に登場する妻の心情を投影し創作されたと想定しますが、劇中で彼女は夫が他の男と関係を続けても構わないとさえ言って結婚を維持しようとしたものの、夫の固い決意により離婚を承認しています。
つまり夫は“性的不一致の二人は別れて適合する相手を見つける方が互いに幸せ”と考え、妻は“それでも一緒にいたい、愛には肌を触れ合う以上の意味があるはず”、とする心情のギャップです。

男女に於けるギャップで思い出したのが、アラン・パーソンズ・プロジェクトの「ドント・アンサー・ミー」です。
ここでも男性が“このまま関係を続けても大切な人を不幸にするだけ”と、女性に「Don't Answer Me」と別れを促しました。
また映画『タイタニック』では極寒の海でジャックがローズを壊れたドア枠の上に乗せて救い自らは海中に没し、『忠臣蔵』でも大石内蔵助が累の及ばぬよう討ち入り前に妻子を離縁しました。

男は愛するほど身を捨てて女を守ろうとし、女は愛するほど身を顧みず男と共にしようとする…
それは一見・真逆のようで、同じ心で繋がっているのかもしれません。


Classic R&B Songs - Roberta Flack - Making Love

最後までお読みいただき、ありがとうございました ♪
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tags : 1982年 バラード/soul 夫婦愛 映画80's バート・バカラック  

コメント

ロバータ・フラックと言えばやはり「やさしく歌って」(Killing Me Softly With His Song)・・。「ネスカフェ」のCM王道ソングだったのでパブロフの犬の如くこの曲を聴いただけでコーヒーが飲みたくなる方も多いことでしょう。静謐な空気(電子ピアノの静かに揺れる音)が流れる中で、芯があって滋味溢れる歌声がしっとり浮き出る印象的なナンバーで大好きでした!「愛は面影の中に」はクリントイーストウッドの映画「恐怖のメロディ」の主題歌で全米NO1でグラミー賞で最優秀賞を2年連続受賞。栄光に彩られたグラミー賞の長い歴史で連続最優秀賞は、唯一ロバータ・フラックだけが成し遂げた大偉業でビックリでした。ダニー・ハザウェイとデュエットした「恋人は何処へ」「愛のため息」も全米NO1、この時代は勢いは止まらず凄かったですね!

2023.11.08  ローリングウエスト  編集

ローリングウエストさん

そうですね、「やさしく歌って」はロバータ・フラックの代名詞で、特に日本ではCMで使われたので知名度も高いでしょう。
「愛は面影の中に」も同時期の作品で全米NO1&グラミーで、その次に有名です。
それ以外ではダニー・ハサウェイとのデュエットが有名ですが、80年代はピーボ・ブライソンとのデュエットが印象的でした。

2023.11.08  Beat Wolf  編集

しっとりして素敵な曲ですね。知らない曲でしたが、コメントを読ませていただき、Killing me softly with his song を歌った方だったのですね。なるほど~~!

2023.11.11    編集

こんにちは。

う~ん、LoveとMaking Loveってこんな風に使い分けるんですね。
タイトルがMaking Loveだとそのままでは日本語にしづらいですね。でもあまり長たらしいのも言い訳めいて変ですから、逆説的でインパクトがあるのかもしれません。

2023.11.11  忠  編集

Re: タイトルなし

何より大事なのは曲名を覚えるより、素敵な曲を一つでも多く心に取り入れることだと思いますよ。

2023.11.11  Beat Wolf  編集

忠さん

…と言うより、Making Loveに該当する日本語が卑猥さを助長している気もします。
一説によると日本人がそれを誤魔化すために使う「エッチ」の語源は「HENTAI」だそうですから、実は逆効果です。(笑)

2023.11.11  Beat Wolf  編集

ロバータ・フラックは昨年もう歌えなくなったことを公表したことを知りビックリです!難病の筋萎縮性側索硬化症と診断されていたんですね。ロバータ・フラックは、自身の生涯を描いたドキュメンタリー映画『Roberta Flack』が制作されていると聞いていますが日本で上映されないか心待ちにしています。

2023.11.15  ローリングウエスト  編集

ローリングウエストさん

まあ80をとうに過ぎていますから、スーパーマンでもない限り病や日常生活の不自由も出てくるでしょう。
ただ近年ALSをよく耳にしますが、実数が増えているのか気になります。
ドキュメンタリーは個人的に、ビートルズのようにレコーディング時の映像や未公開音源・情報を期待します。

2023.11.17  Beat Wolf  編集

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