I Wish~洋楽歌詞和訳&解説

80年代の洋楽ロック・ポップス&ビートルズを中心に、歌詞の和訳と解説+エッセイでお届けします

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「名前のない馬」アメリカ

2023.11.17

category : America

America - A Horse With No Name (1971年)

シンプルなアコースティックに難解な歌詞。だけどあなたにも、こんな“旅”に覚えがあるのでは?

《解説記事を更新》いたしました。【続きはこちら>>】をクリックしてご閲覧ください。


~ Lyrics ~

Writer(s): Dewey Bunnell /訳:Beat Wolf

その旅の始まりで
僕はあらゆる生命に目を向けていた
そこには草木や鳥たち、岩々やさまざまなもの
砂原や幾つもの丘、そしてリングもあった
最初に出合ったのはブンブン音を立てる蝿と
雲ひとつない空
火照るほどの熱気と乾いた大地
だけど、空気はその営みの響きに満ちていた

[Chorus]
名前もない馬に乗って砂漠を往く
雨に遭わないのはいい気分
砂漠では誰もが自分の名前を思い出せる
そこでは、誰も苦痛を与えない
La, la, la lala la la la, la, la...

砂漠の太陽の下で二日が過ぎると
肌も赤くなり始め
砂漠の慰みも三日が過ぎると
僕はある河床に目を向けていた
それは、かつて溢れるように水が流れていたことを物語り
川は死んでしまったのだと、悲しませた

[Chorus]

九日が過ぎ、僕は馬を解き放った
景色は既に、砂漠から海へと変わっていた
そこには草木や鳥たち、岩々やさまざまなもの
砂原や幾つもの丘、そしてリングもあった
海とは、その下に生命を宿す砂漠
表面からはその営みを完全に覆い隠している
都市の下には、大地に育まれた心が眠る
だけど、人は自分以外に愛を与えない

[Chorus]



~ 概要 ~

アメリカはジェリー・ベックリー、デューイ・バネル、ダン・ピークの3人によりロンドンで結成されたバンドです。
“イギリスで結成されたアメリカ”とは奇妙に思えるかもしれませんが3人はロンドンに駐留する米空軍人の息子であり、【America】というバンド名は“アメリカ人のように聴かせようとしているイギリス人ミュージシャンと思われたくなかったから”でした。

1971年に1stアルバム『America』を完成させましたが、レーベルのワーナー・ブラザースは収録曲からの第一候補と想定されていた「I Need You」を最初のシングルとすることに消極的でバンドへ他の曲を求めたため、急遽レコーディングした4曲のうちの一つが「A Horse With No Name」でした。
デビュー・シングル「名前のない馬」は1971年11月12日にイギリスでリリースされるも、12月18日の49位をピークとして瞬く間に“圏外”へと消えてしまいます。
しかし同年12月24日に1stアルバム『America』がリリース(※)されると「名前のない馬」も翌1972年1月8日に再びチャート・イン、1月22日に全英3位まで上昇しました。
(※上記の経緯により『America』には当初「名前のない馬」は入っていなかったが、その後の再発盤から収録)

一方、米国では1972年1月12日に「名前のない馬」がリリースされると3月25日にデビュー・シングル&アルバムが同時にBillboardでNo.1に輝き、それぞれ3週間(年間;27位/All Time;549位)/5週間トップの座を維持するという快挙によってアメリカは見事“故郷に錦”を飾ることとなりました。
これらが米国でチャートを登り始めた2月、彼らはエヴァリー・ブラザーズの北米ツアーの前座としてロサンゼルスでツアーを行っていましたが、残念ながら快挙の達成を母国で見届けることなくイギリスへ帰国しています。
しかし2ndシングル「I Need You」も大ヒットを記録し、一連の活躍によりアメリカは73年のグラミーで【最優秀新人賞】を受賞しました。

アメリカは、アマチュア時代からアコースティック・ギターと3パートのヴォーカル&ハーモニーという【クロスビー、スティルス&ナッシュ(&ヤング)】路線のサウンドを志向しており、「名前のない馬」でデビューした時もキャッシュボックス誌が“CSN&Yのサウンドに似たもの”と表現したように、当時多くの評論家や音楽ファンも同様の印象を抱いたようです。
これについて本曲を作曲・歌唱したデューイ・バネル本人は、“この曲で自分がニール・ヤングに似ていることはよくわかっていたけど、彼の真似をしようとしていたわけではない。パクリの烙印を押されないよう違う声を使うようにしているけど、誰かに似ないように歌わなければならないというのも、うんざりする”と、1973年にローリングストーン誌で語っています。
また「名前のない馬」が全米No.1に輝いた時、No.1の座を奪われたのがニール・ヤングの「孤独の旅路」(Heart of Gold)だったというのも、因縁めいた興味深い事実です。


ところで、本作品ではアメリカのオリジナル以外にも興味深いバージョンがあるのでご紹介いたしましょう。
オリジナルもハーモニーの美しさが魅力ですが、オフコース ver.は“本家を超えた”と表して過言でない美しさで、これは超オススメです!
次は1986年に桑田佳祐が企画した『メリー・クリスマス・ショー』でのKUWATA BAND、THE ALFEE、チェッカーズらによるカバーで、もう二度とこのメンツは揃わないだろうという意味で貴重でしょう。
そして2005年の『SoundStage Season 3』はアメリカのパフォーマンスに加え、あのクリストファー・クロスがギター・シロを披露しています。


 
 



~ Story ~

On the first part of the journey
その旅の始まりで
I was looking at all the life
僕はあらゆる生命に目を向けていた

作者であるデューイ・バネルは本曲について、“(父の仕事の関係で)カリフォルニア州のヴァンデンバーグ空軍基地に住んでいた時、僕と兄はアリゾナとニューメキシコをドライブし高原の砂漠を巡ってかなりの時間を過ごしたんだ。サボテンと暑さが大好きで砂漠の光景や音を捉えようと試み、最後は環境に関するメッセージを感じた”と、語っています。
創作は彼が19歳の時にその思い出を振り返り、バンドがイギリス・ドー​​セット州パドルタウン近くにあるミュージシャン、アーサー・ブラウンの家に滞在中に書いたもので、当初のタイトルは「Desert Song」でした。


There was sand and hills and rings
砂原や幾つもの丘、そしてリングもあった

【rings】とは何でしょう?
砂漠や乾燥した草原で地面に“輪形”が形成される【Fairy Circle】という不思議な現象があるそうですが(シロアリによって形成されるとの仮説もあるがコンセンサスは得られていない)、報告されているのはアフリカ南部と西オーストラリアの一部のみであり、アメリカでは確認されていません。

【砂漠】というと多くの方は“見渡す限り砂地が広がり風紋を織りなしている情景”を想像されると思いますが、実際にこうした【砂砂漠】は全体の20%ほどに過ぎず、約70パーセントは礫(2ミリメートル以上の粒)によって覆われている【礫砂漠】、残りは岩盤がそのまま露出した【岩石砂漠】・土や粘土によっておおわれた【土砂漠】で、下のMVを参考にするなら本作品の舞台は礫・岩石・土砂漠が適合するのでしょう。

ちなみに日本は温帯湿潤気候で降水量が豊富であるため厳密な意味での砂漠は存在せず、有名な【鳥取砂丘】も“ボランティアの除草”によって景観を維持しているそうです。


I was looking at a river bed
僕はある河床に目を向けていた

デューイは本曲について、“ある程度の環境保護ソングだった。地球を救おうというヒッピーの時代の一部だったし、僕らは自然やアウトドアにずっと心を引かれていた…”と、語っています。
晴天は気分もいいですが、雨が降らないと水を枯渇させ“川の死は生命の死”に直結することを、幼心も気づいたのでしょうか…。

子どもにとって“学び”とは、視覚に偏った書物以上に“五感を刺激する体感”が如何に大切か、再認識させられます。
同時に、“人間の都合を優先し自然と地球環境の調和を破壊することが如何に愚かで自滅的な行為であることか”、も…。


America - A Horse With No Name (1972)




~ Epilogue ~

You see I've been through the desert on a horse with no name
名前もない馬に乗って砂漠を往く

主人公は何故、“馬に乗って砂漠を旅”したのでしょう?

【horse】には“ヘロイン”のスラングもあり、それを抱かせると判断した一部のラジオ局が本曲を放送禁止にし、評論家による解説でも“ドラッグ・ソング”と指摘されることが多い作品ですが、デューイによると【雨】は“悲しい感情の比喩”、「名前のない馬」は“人生の混乱から静かで平和な場所へ逃れるための乗り物の比喩”であると説明しており、歌詞もそのような趣旨と理解できます。
つまり主人公が【砂漠の旅】へと出掛けた目的は“雨(悲しみ)からの逃避”であり、歌詞から推察するなら【悲しみ】とは“人に愛を与えない人間社会”でしょうか…。
(【ヘロイン】の使用もある種の“逃避”であり、悲しみから逃れるために【horse(ヘロイン)】に乗る(溺れる)、という仮説も一応筋は通る)

砂漠の旅かは兎も角、あなたもきっとこの主人公のように“日常に疲れ、人のいない自然へ逃れたい”と思った経験はおありでしょう。
問題の原因が本人個人にあるなら、一時的な逃避により心をリフレッシュさせて元の環境に復帰し、それまでと変わらない日常を継続することも可能です。
しかし問題の原因が本人個人でなく、“人に愛を与えない人間社会”にあるとしたらどうでしょう…?


10月に私は『ジャニーズ性加害問題』に関連した記事を書きましたが、11月に入ってジャニーズをはじめとする“芸能界の闇”が前途ある若者とその家族の命をも奪っている現実が相次いで報じられ、衝撃を受けました。

一つは、1999年に『週刊文春』がジャニー喜多川氏の性加害について14週連続大キャンペーンを行った背景に、文春で最初に【自らの性被害を証言したジャニー氏の元付き人がNHKの前で割腹自●】を遂げる衝撃的事件が起きたことに加え、当の【NHKをはじめ各メディアがこれを報じた形跡がない】という信じ難い“事件”があったようです。
二つ目は今年11/14、『ジャニーズ性加害問題当事者の会』に所属する40代男性が大阪府箕面市の山中で死亡(自●とみられる)が確認されたと報じられた事(問題を巡っては、当事者の会に対する誹謗中傷がSNS上で相次いでいた)。
三つ目は元ジャニーズ・レッスン生だった男性の告白で、性被害を打ち明けた後、息子をジャニーズへの応募を勧めた母親が自●した事例。
四つ目は宝塚歌劇団の劇団員が亡くなった(自●の可能性が高い)事案で、宝塚は彼女の死の原因を“いじめ”ではなく“長時間労働”にすり替えようとしているように見える事…。

 
【恐怖の切腹自●事件】ジャニーズ問題の内部告発者はNHK前で自ら命を絶った!異様な事件を元文春編集長が激白。反省しないマスコミ達。元博報堂作家本間龍さんと一月万冊/ 「先輩が夜中にドアを殴りに」「“外部漏らし”はすごく怒られる」元タカラジェンヌ 東小雪さんが語る宝塚の“上下関係”【news23】|TBS NEWS DIG


これらの事象に接し、私が想起したのは『森友事件』で近畿財務局職員の赤木敏夫さんが2018年に自●された事案です。
『森友事件』は森友学園の籠池泰典理事長(当時)が安倍首相(当時)・昭恵夫人との親密な関係を利用し国有地を86%値引きで取得した事件であり、国側で売買交渉に当たったのは“安倍氏と同郷”の迫田英典・財務省理財局長で、赤木さんはこの不正土地売買事件には無関係でした。
この不自然な値引きが露見し国会で安倍首相が追及されるようになると、財務省が安倍首相・昭恵夫人ら政治家の関与を示す不都合な証拠の削除・改竄を指示、赤木さんはこれを拒否していたものの近畿財務局へ更に強い圧力が掛かり上層部が屈服、部下を犯罪に関与させないため赤木さんが公文書の改竄を実行することになります。
しかしその後の赤木さんへの“仕打ち”も苛烈で、大阪地検特捜部が捜査に入る直前に近畿財務局は赤木さん以外の職員を当該部署から移動させる人事を行い、赤木さんはこれに精神的ショックを受けて心の病を発症、『手記』によると〈大阪地検特捜部はこの事実関係をすべて知って〉いながら赤木さんだけを厳しく取り調べ、一方で安倍首相・昭恵夫人と財務省の犯罪には一切触れませんでした(これは、“官邸と検察上層部が描いた幕引きシナリオ”とも言われる)。
結果、自らの保身と栄達のため官邸・政府ぐるみの組織犯罪に加担することを罪とも思わない巨悪が更に栄え、部下を庇って犯罪を実行しその罪の重さを自責した赤木さんが自●するという、“人に愛を与えない日本社会”を象徴する事件です。

人の不幸を“他人事”と思ったり、“逃避”するだけでは“ツケ”は必ず“弱者”に押し付けられます。
庶民に悪い社長・上司や役人を代える権限はありませんが、代議士(政党)を選ぶ権限があり、“博愛”を持った代議士(政党)を多く当選させることでこの国を“人に愛を与える社会”に変えることは可能です。


America A Horse With No Name Live 1973

最後までお読みいただき、ありがとうございました ♪
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tags : 1971年 フォーク・ロック アコースティック 心の旅 難解 環境  

コメント

この曲大好きです!!

こんばんは。
お久しぶりです。

この曲大好きです。
美しい曲、コーラスですね。

2023.11.17  トリトン  編集

こんにちは。

ジャケットから考えるとアメリカ原住民の物語であり、名前のない馬は人生そのものであり(その馬には、成功とか失敗、幸福や不幸という決まった名前は無い)、途中でいくつか文明批判はあるものの最後は生命の源である海にたどり着く。それは死のことですから人生を支えた馬はもう必要ない・・・・また別の人生を乗せるのかもしれない。

2023.11.18  忠  編集

Re: この曲大好きです!!

お久しぶりです。
この曲お好きでしたか。
時代が変わっても美しい曲は変わることはありませんね。

2023.11.19  Beat Wolf  編集

忠さん

今回は作品も詳しく分析されており、記事を書けそうなほど見識がおありのようですね。
この難解な歌をそこまで理解されておられるとは、お見それしました。

2023.11.19  Beat Wolf  編集

中学三年の時、高校受験勉強で深夜ラジオから流れてきたのが彼らのデビュー曲「名前のない馬」でした。淡々と歌い上げるフォークロックテイストの曲は期せずしていきなり全米NO1となり一躍全世界にブレイクし登場して「へ~、こんな地味な印象の曲が大ヒットとなるのか・・」と驚いたものです。しかしなぜか心に刻まれ感性に訴えるものがありました。デビューアルバムもミリオンセラーを記録し、その年のグラミー賞では最優秀新人賞の栄光に輝いたのです。当時はハードロックやプログレの全盛期でしたが、それらとは一線を画す「シンプルで味わいある生の音」がとても新鮮でしたネ~!

2023.11.23  ローリングウエスト  編集

ローリングウエストさん

エイジアも80年代前半は飛ぶように売れたのに、半ばになると決して楽曲として劣らない「ゴー」が全くヒットせず、鮮度と流行の影響が大きいと思います。
「名前のない馬」はCSN&Yが人気があった時代なので、ヒットしたと思います。
でもシンプルで味わいある生の音は、たとえ時代が変わっても気に入る人は必ずいるはずです。
私もその一人ですから。

2023.11.23  Beat Wolf  編集

こんにちは。アメリカは大好きでした。LPも買いました。金色の髪の少女やヴェンチュラハイウェイなども名前のない馬同様、大好きでした。取り上げて下さってありがとうございます。でもどういう方達なのかは全く知りませんでした。ご紹介下さりありがとうございます。
話変わりますが、本当に選挙は人間味あふれる方に当選していただきたいですね。一人一人が自分ごととして、もっと政治に関心をもってほしいです。

2023.12.01  みりびにり  編集

みりびにりさん

お好きでしたか。
リアルタイムだとこういうサウンドは珍しくなかったと思いますが、私が聴いた80年代では逆に新鮮でした。
でも、同じ曲でも若い頃聴くのと齢を重ねてから聴くのでは理解力も違うので、今はもっと好きです。
政治・行政は国民が税金を払って代行者(公務員)を雇っているので彼らが国民全体の利益のために働くのが当たり前なのに、何兆円もの税金を彼らの利益のために浪費した公務員を再雇用するなんて、常識を持っていればあり得ないですよね。(涙)

2023.12.01  Beat Wolf  編集

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