Suzanne Vega - Luka (1987年)~6年ぶり日本公演~ 今年1月、7年振りとなる8thアルバム『Tales from the Realm of the Queen of Pentacles』を発表し、この4/7から日本公演を行うスザンヌ・ヴェガ。
彼女は昨年も“フジロック・フェスティバル”への参加のため来日していますが、単独としては2008年以来の日本でのステージとなります。
詳しいことはスザンヌ本人が動画でメッセージをくれているので、
こちらのリンク よりどうぞ(1分弱です)♪
また、直近に放送された
NPRのスタジオ・ライヴ・セッション での「Luka」を含む映像も公開しています。
~概要~ スザンヌ・ヴェガは1985年にデビューしたアメリカのシンガー・ソングライターですがアコースティック・ギターを爪弾き歌うそのスタイルは、同じ時代を象徴する
シンディ・ローパー や
ベリンダ・カーライル といった色鮮やかな女性シンガーとは全く異なる色あいを放っていました。
また、彼女が取り上げるテーマも社会問題を内省的にアプローチすることが多く、デビュー以来一貫して流行歌とは一線を画してきたといえます。
そんな中で一般的なヒットという意味での成功を収めたのが1987年の2ndアルバム
『孤独(ひとり) Solitude standing』 であり、このアルバムからは日本でもCMに起用された「Tom’s diner」も有名で、この作品は1990年代にイギリスのデュオDNAによってサンプリングされ、世界的にも大ヒットしました。
一方で1stシングルとなった「ルカ」も世界的にヒットした作品で、アメリカBillboard Hot 100で
3位(年間52位) を記録しています。
スザンヌの曲調としてはポップな方ですが
“児童虐待”という重いテーマ を取り上げており、こうした姿勢が優れた楽曲と共に評価され、授賞は逃したものの1988年のグラミーで“最優秀レコード賞”・“最優秀楽曲賞”の主要2部門に加え、“最優秀女性ポップ・ヴォーカル・パフォーマンス賞”にノミネートされる大活躍の1年となりました。
~Lyrics~ My name is Luka ボクの名前はルカ I live on the second floor 2階に住んでいるんだ “Luka” はスラブ(ロシア~東欧)男性の洗礼名を語源とし、英語だと
Luke (ルーク)や
Lucas (ルーカス)。
…そう考えると“アノSF映画”の世界的名作も、実は監督(ルーカス)が自分の分身を主人公(ルーク)とした“ヒーロー願望”を創作・映像化させた作品だったコトが想像できるでしょ!?
スザンヌによると、ルカのモデルは彼女の近所に住んでいた男の子だそうです。
実際に虐待があったというわけではなく、みんなと遊んでいても“どこか他の子と心の距離がある子”という印象を持ち、気に掛かっていたといいます。
I think it's because I'm clumsy きっと、ボクがちゃんとしないせい I try not to talk too loud もっと、大人しくしなきゃいけないのに 幼い子どもほど“大人の言うことは正しく、叱られるのは自分が至らないせい”と素直に信じています。
だからこそ“躾という名の
矯正 ”が成立するわけですが、それは一歩間違うと“単なる
強制 ”と成り果ててしまうものです。
“矯正”とは、物理的・心理的圧力で制するものではなく、“何故そうしなければならないか、納得させた上で正しく導く”行為でなければなりません。
オトナだと、それが正しいと解っていてもプライドのために矯正できない場合も多いですが…。
I guess I'd like to be alone でも、一人っきりになりたいな With nothing broken, nothing thrown モノが壊されたり、投げつけられたりしない所 言い付けを守ろうと努め、親を庇ってきた健気なルカもここで本音がポロリ…。
しかし、こうなるともはや躾か強制かといったレベルではなく、単なる“暴力”でしかありません。
子どもは成長し、いつか一人になりたいと願うものですが、ルカはまだその年代に達していないと思われます。
そんな彼の気持ちに耳を傾け慰めてくれる家族が、この家にいないのだろうか…。
~ルカ、君は誰と話しているの?~ このストーリーを読んでみて、一つの疑問が残ります。
ここに登場する
“ you ” …つまり話し相手は誰なのか?
ルカと同年代の子ども? …それとも大人?
…私は想像します。
この物語は、” ルカの独り言 ”なのではないかと。
Just don't ask me what it was “何かあった?”って、訊かないで… 繰り返されるこのフレーズは、ルカの気持ちの一面を象徴しているはずです。
理不尽に支配された毎日は“一人っきりになりたい”と願わせる殺伐としたものではあるものの、“ 親の矛盾 ”を外部に漏らすことは親への裏切りであり、そんなことをしたら自分のせいで親が責められてしまうと案じ、それを隠そうとするのでしょう。
一方で、
“ 誰かに苦衷を聞き届けて欲しい、そこから救い出して欲しい ” と願っていて、
でも実際は
誰にもそれを打ち明けられず、心の中の“ you ”に語り掛けている …
それが、児童虐待など家庭内で起こる問題全般に共通した本質ではないかと思うのです。
~Epilogue~ “乱暴なこと、しちゃいけないよ。”
大人は子どもに必ず、そう教えるはずです。
でも…
時に大人は、その“教え”に反することを子どもにしてしまうことがあります。
“親は、子どもに乱暴なことをしてもいいの?”
子どもは、親の“模範”をしっかり観察 しています。
“そうだね。
誰がどんな理由で用いようと、暴力は悪いことなんだよ。 ”
子どもに、ちゃんと答えられる大人でありたい…。
「ルカ」 Writer(s):Suzanne Vega /訳:Beat Wolf ~Lyricsはこちら~ * ボクの名前はルカ 2階に住んでいるんだ キミの真上の部屋 そう、見たことあるでしょ? ** もしね…夜遅く何か物音を聴いても モメ事とか、ケンカの騒ぎがあっても “何かあった?”って、訊かないで… きっと、ボクがちゃんとしないせい もっと、大人しくしなきゃいけないのに きっと、ボクがどうにかしてるせい もっと、行儀よくしなきゃいけないのに *** アノ人たちが、泣くまでひたすら叩くからって “どうして?”…って、訊いちゃいけないよ 口ごたえしちゃ、いけないいんだ… “うん、ボクなら大丈夫 部屋に戻って、いい子にしてるから” …訊かれたって、そう答えるんだ キミには関係ないことだもの でも、一人っきりになりたいな モノが壊されたり、投げつけられたりしない所 “どうしたの?”って、訊かないで… * ** ***最後までお読みいただき、ありがとうございました♪
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1987年 フォーク・ロック 社会
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